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繰り返しの人生で勝ち組になるんだい!  作者: 宇野零
弱くてニューゲーム
27/35

新たな能力の目覚め

「獅子ケ谷!!どうしたの!?」




声が聞こえた時にパリン、と水晶が割れる音がした。

部屋中の水晶が粉々に砕け散っている。

色とりどりの欠片が中に浮かんでいる。



「鶴見俺は今どうしてた?」


「どうって、暫く考え事してたから邪魔しちゃ悪いかなって思ったけど、様子がおかしかったから、慌てて声を掛けちゃって。でも、成功したようだね。」




「成功?」



「うん、獅子ケ谷の周りにあった水晶ね、私が用意した能力の生まれる媒体になるものだったのよ。どれかが当たればいいな、って思ってあるだけ用意したのよ!でも、全部だなんて・・・」




「あ、貴重な物だったのか?すまない、イメージが膨らんでしまって。つい、あれもこれもとなってしまったんだ。」




「いいよ。私が考えていたのは、全部割れることなんて有り得ないと思っていたって事だから。器用貧乏だからかな?全部叶っちゃうなんて。」


「そうかもな。最近色々あったからな。」


「そう。色々あったんだ。言いたくなったら教えてね?」


「あぁ、約束するよ。この件が落ち着いたらな。」





「もしや、気付いちゃった?」





「気付いたよ。能力が無いと、気配にも鈍感になるんだな。」



すぐ近くにも、遠くにも、恐らくは、渋谷、原宿、六本木辺りは獣魔、そして獣魔とは違う化物が山程いる。


未来で聞いた「魔物」が現れた時とは今日の事だろう。

そして、「魔族」が現れたのも。



「それで、あなたはどんな能力にしたのかな?ヒーロー。」



「刀だ。」



俺の右手に中に浮かぶ水晶の欠片が集まっていく。

右手を覆うように集まり、先端が伸びていき

一定の長さになった所で


パリーーン!


右手を覆っていた水晶が割れた。

俺は刀を手にしていた。


鍔には花鳥風月の意匠。

鞘シンプルな作り。

刃は黒い。

というか、全部が真っ黒い。




「良い刀じゃない。なんて名前にするの?」




「『花鳥風月』にしようかな。」




「そのままね。ツバのデザインでしょ?ここからでもちゃんと見えてるんだから。それで、能力のキーワードは?」



「うーん、もう着装ではないしなぁ。」


「長い方がいいよ。」


「そうなのか?」


「そうよ!お師匠なんて一文字しかキーワードにしてないから戦闘向きじゃないのよ!私は三文字だから戦闘に使えるし、三倍凄いのよ!」


サツキさん聞いたら目くじらを立てそうなセリフだ。



「そうだな・・・じゃあ、、、決めた。」



「次は、「刻め!」と言った後にキーワードを言って。ちゃんと力を込めるのよ?それに、拒否される事もあるからね?」


「拒否って?」


「勿論、能力よ。」


「え?能力って意志があるのか?」


「意志は?多分、あるんじゃないかな?私は喋れはしないけど、意思疎通は出来てると思うよ。うん。」



知らなかった。じゃあ、さっき女性の声は・・・



「さ、早くキーワードを決めちゃいましょう。」



「そうだな。・・・刻め!『威風堂々』!!」




黒かった『花鳥風月』が白と黒のコントラストの刀になった。



「四文字いかれたか!!これでお師匠の四倍ね!」


「だから、その漢字でのカウントといい何基準なんだよ!」



思わずフッと笑ってしまった。


新たな力に酔ってるんだろうか?

今なら何でも叶いそうな気がする!



「やっと、いつも見たく笑ってくれた。」



「え・・・?」



「ずっと、無理してた。私もお師匠も心配してたんだから!感謝しなさいね!特に私に!」



気付かなかった。何も。

平常心に戻っていたと思っていた。


「心配させて悪かった。もう大丈夫だ。」


この力で、守りきってみせる。

もう何も失ったりしない!!




「それで、その子はどうするの?」



え、その子って?



「キュー!」



赤い蛇?というより赤い龍?

デフォルメされて妙に可愛いけど、何コイツ。




「獅子ケ谷の能力なんだから、大事にしなよ?」



使い魔の能力の希望も叶ったのか。

名前は・・・



「レッド」



「キュー!」


「そのままね・・・」




さて、そろそろ行こうか。


「私も行くわよ。」


「キュー!」



「あぁ、頼りにしているよ。さぁ行こう!」



もう俺は一人じゃない。

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