夏至の翌日
俺と鶴見はあの後に別々の部屋に案内された。
俺の部屋は外出を禁止され、扉の前には警護の人が着いてくれている。
更に窓は無く、不思議な素材で出来ている壁だ。
音は反射しない。衝撃も響かない。
監視カメラは付いている。
牢獄みたいだな。なんて思っていた。
そして、俺にとっての運命の夜は過ぎる。
「おはよー!獅子ケ谷。」
「お早う。鶴見。」
俺は無事だった。
そして、騒ぎにもなっていないし、鶴見も無事だ。
だが、まだ分からない。
横浜で何が行われていたか、何が起こっていたか。
「おはよう、二人とも。」
「おはようございます。」「お早う。」
「それで早速だが、獅子ケ谷。お前が助けたという生徒についてだ。」
「あぁ。」
「私が警備隊を連れて向かった時に、確かに獣魔に似ている変な化け物が陽光学園の女子生徒を襲っていた。」
「それで?」
「私が助けようとした時には」
「彼女は身体から能力を開放して、自分で助かっていた。」
「・・・能力者だったのか。」
「あぁ、それもかなり特殊なものだ。唾を付けておいたよ。」
自分が助けなくても、彼女は助かっていたのか。
「助かって、良かった。」
「そして、横浜だが」
「何も無かったよ。」
「何も?」
「何もだ。」
「すぐに警備隊の人間により監視を始めたが、一般人以外、誰も来なかったし何も行われていなかった。イチャイチャするカップルがいて胸焼けをしたと、そう言っていたな。」
「そっか、何も無いなら・・・良かったんだろうな。」
不安が残らないわけではない。あの時の恐怖は、絶望は俺の胸に残っている。
「あんまり背負い込むな。別にお前だけで対抗する必要は無い。私や鶴見もいるんだからな。」
今の俺は一人じゃない。
それだけで、強くなれる。
「ところで、鶴見の能力はなんなんだ?」
「私の能力はね」
「その前に、とりあえず飯にしよう。私は朝もしっかり食べたいのだ。」
ちなみに俺もそうで、鶴見もそうだった。
みんな朝はしっかり派。
食後、運動場のような場所に集まっていた。
「獅子ケ谷のトレーニングはお前に一任する。」
「お師匠!私まだ、能力開発に成功はしていないんですが・・・」
「安心しろ。私が『見通す』限り、こいつは器用貧乏タイプだ。何をやらせてもうまく使うだろう。」
「でも、それが彼に向いてるかは・・・」
「そこがお前が成功しない理由だ。向いているかどうかは獅子ケ谷が選ぶんだ。使うのはお前じゃない。そこを混同させるな。」
お前たちの世代はそういう世代なのか?と首を傾げながらいう。
「俺は鶴見の事を信じるから、そんな心配せずに、一緒に頑張ろう。」
「うん。じゃあ、、、、まずは身体能力の確認からね!お師匠、それでは行ってきます。」
「あぁ、もう一度いうが、暫くはここで能力開発をしてもらうからそのつもりでな。」
俺は鶴見に連れられて、運動場横の建物に入っていく。
「さて、あの二人は大丈夫だろう。」
「おい!昨日の少女はまだ眠ったままか?」
どこからか現れた巫女姿の女性は言う。
「はい、あの少女はまだ眠ったまま目を覚ましません。」
周囲には13名の巫女服姿の女性が膝をつき、頭を垂れている。
「そうか、では『アリ』と『ナシ』はそのまま少女の監視に付け。『霜月』と『弥生』は獅子ケ谷達の警護。残り半分は私の元に、後は街に出て治安維持だ。」
「化物達を即時殲滅せよ!!」
確かに横浜では何も起こらなかった。
その代わり、獣魔ではない化物が各地に現れ、被害が出ている。
「はやく、戦線復帰してくれよヒーロー。」
そう言って彼女も戦場へと出ていった。




