神界の出来事
「はい、大体のことはわかりましたー。」
「それで出陣して、部隊の他の人員が死滅して、洞窟の中で、、、と出会い、次元の間に飛ばされて、今ここにいると。」
フムフムと目の前にいる金髪の美女はうなずいている。この世のものとは思えない美しさだ。実際この世のものではないんだが。
「はい、その通りです。・・・神様。」
「いうよ、もう。信心深くない人間にいきなり丁寧にされてもこっちが驚く。」
神様は金髪の美しい女性の姿で、気さくに話してくれている。
そう、俺は今、神様と一緒にいる。
ここは次元の狭間という所らしい。いわゆる神界。神様が生活する世界。
寿命は長いらしいが、この神界で神様達は人間達の「普通」に暮らしているとの事だ。
仕事が、「世界を収めること」という事が俺達からすると普通では無いんだが。
「それで~・・・もう少し君の自己を確立してもらう必要があるかな。君は一体何者なんだい?ポーン1?いや獅子ヶ谷君かな?」
「自分のことですが、混乱をしています。さっきまで自分のことをポーン1として生まれ育ったと思っていました。ただ、ここにきて獅子ヶ谷と呼ばれていた時の記憶と、レオンと呼ばれていた記憶が蘇りました。」
「そして、記憶というのもはっきりしている訳ではありませんし、自分以外から見た時に何者なのかはもうわかりません。ただ、俺は俺です。自分が自分であることを俺は知っています。」
神様はため息をはいてウェーブがかった髪をクルクルと指に絡ませながら言った。
「まぁ、それでいいんじゃないかな?ふふ、君は哲学者みたいなことを言うんだね。」
「どうだい、君。私のものにならないかい?」
「それは、どういう・・・?」
「君の身体をよこせ、といっているのでは無いからね?」
ちょっと期待してましたとは、言えない。
「神に対して何を思ってるんだい!」
筒抜けか。厄介な。
「僕の私兵として暫く働かないか?」
「・・・理由を尋ねても?」
「君は身元不明、といえる。君以外にも、身元不明者は大勢いるんだが、その分自己が確立している人間は少ないんだ。それに、僕は戦える人間が欲しいんだ。君のその強い自我。ホムンクルスになってその魂の強さを持っていることで、君は君自身の力であった鎧を使えた。まぁ、本当はもっと様々な力と加護を持っているはずなんだけど・・・」
「どういうことです?」
「君は自分の力を知らないまま、力を奪われた。そして君は奪われてない眠れる力にさえ気付いていない。」
「眠れる力に気付いていないのは、しょうが無い部分はあるんだけどね。僕が立てたプランだと君は様々な敵と戦って強くなったり、修業をしたりして、眠れる力を呼び覚ます筈だったんだ。」
「君の鎧の力は、、、、君が正義の味方をやっていた時さえ本来の3割程度の力だったんだ。」
自分の能力を分析されるのはあまり心良いものではない。
ただ、相手が神様であり、なおかつ、強くなれるという事実を知らされ俺はうれしくさえあった。
「それで?君の答えは?」
決まっているが、確認が必要なこともある。
「・・・助けられますか?」
「助けられる。」
即答だった。
「誰をとかは聞かないのですね?」
「神だからな。出来ないなんて有り得ない。」
「するんだ。僕と君で!」
「それに、何というか、僕はある程度は、例えば流れの様なものなら、自分の思うとおりに寄せる事が出来るんだ。観測の神だから殆ど力はないんだけどね。」
神は苦笑に近いような、少し困ったように笑いながら言った。
「それで、だ」
「君が関わってきた内容は私が関われない内容なんだ。」
「君の望みである個別の誰かを救う事は私では関われない。」
「だから、君が救うんだ。」
「私には、君を送り出し自分の意図へと近づける事が出来る。そして君は助けたい人を助けることができる。これが、ウィンウィンの関係だよ。」
笑顔でダブルピースをした美女こと神。つまり女神。
「ウィンウィン・・・?」
「ウィンウィンっ!!」
神はダブルピースを崩さないまま嬉しそうに言う。
今の俺に選択肢は無い。答えは決まりきっていた。
「よろしくお願いします。」
「うむ。」
こうして俺は神の私兵として生まれ変わった。




