告白?
「はわぁ〜かっこよかったなぁ〜///」
「また日下部君見てきたの?」
呆れたように麻里が言う。
私の唯一心を落ち着かせられる大親友だ。
「だって…目に入っちゃうんだもん///」
「校内一のイケメンって言うけどさー…正直わかんない…。」
「恋愛にうといなぁ。麻里は。」
「うん…。」
麻里ちゃんは恋愛をしたことがない。
みんながイケメンだと騒ぐ人にも全く興味がないのだが、凄く美少女だ。
「でも、コミュ障の愛梨には告白なんて…ねぇ?」
ニヤッと麻里が笑みを浮かべる。
「そうなんだよね…無縁だよぉ…」
私は人と話すのが苦手だ。
唯一緊張しないで話せるのは家族、麻里ぐらいだ。
「ん…?なんかクラスざわついてない?」
「ん、本当だ。」
女子の黄色い声が聞こえる。
「宇佐美さーん?」
「ひゃ、ひゃいっ!」
「…日下部クンが呼んでる。」
「…ふぇ?は、はい…」
日下部君が私のことを…?
「愛梨、行ってらっしゃい。」
「う、うん…!」
麻里の笑顔で元気づけられた私は、心の準備をして教室の扉へと向かった。
「な、なんでひょうかっ!」
うぅ…噛んじゃった…
「あ、宇佐美さん?いきなりごめんね」
「い、いえっ!」
「てさ、またまたいきなりで悪いんだけど…」
なんだろう…私なんかしたかな…?
「俺と付き合ってくれない?」
「…ふぇ?」
その瞬間、静まり返っていた教室や廊下が一気に騒がしくなった。
女子の悲鳴や、男子の歓声でごった返していた。
「え、えと…あの…それはどういう…?」
「とりあえず、こっち来て」
「ひゃっ?!」
私は強引に日下部君に引っ張られ、ざわつく廊下を後にした。
♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡♥♡
「ふぅ、ここまで来ればいいだろ。」
「あ、あの…」
「あ、ごめんごめん」
日下部君は掴んでいた私の手をぱっと離した。
「それで、あの…付き合うっていうのは…」
「あ、ごめん。あれ嘘なんだ。」
「…はい?」
意味がわからない。
日下部君の告白は嘘だったってこと?
「なんで…そんなこと…」
「実はさ、彼女の“ふり”をして欲しいんだよね。」
「ふり…?」
またわかんなくなってきた。
日下部君の告白は嘘で、彼女のふりをしてほしいと…?
「なんで…私、なの?」
「俺のこと興味なさそうだったから。」
「え…じゃあ、私が日下部君のこと、好きだったら、どうしようとしてたの…?」
「…好きなの?」
「す、好きじゃないよ!」
つい嘘をついてしまった。
告白なんて、今すぐできるものでもないし。
「ならよかった。引き受けてくれる?」
「え、えっと…」
日下部君の近くにいたい。
でも、日下部君の彼女には一生なれない立場で、日下部君といる。
本当にそれでいいの…?
「お、お願い…し、ます…」
考えているうちに私の口はそんな言葉を紡いでいた。
「本当に?!ありがとう!」
日下部君の顔がぱっと晴れた。
私は、不意にもドキッとしてしまい、“この気持ちも隠さなきゃ”と心に決めた。