白紙
私達は、電車の乗り降り時間がまだだったので駅の構内で暇を潰すことにした。
葵はこう切り出した、
「尚奈、例の作戦どうする?」
ドーナツ屋さんに入ると、店内を見回して4人席を探す。
「むーそうだなぁ。健二が来てから考えよー」
「良い助っ人が居ないんだよね」
店内は混雑している。私は、4人席を見つけるとウインドウ側に陣取る。
りょう先生はどれにしようか迷っている。
席を待つ私をよっちゃんはじっと見つめると、観察するかのように黙って対面席に座る。
「お前、いっつもそうだよな…公共の場で、どうして、そんなルーズな格好なんだ?」
「何故ってそれは見た目に自信があるからだよーむー」
よっちゃんは鼻で笑って、こう告げた。
「お前、よくそれで苛められないよな。以上だ。俺はドーナツ食わね」
「…何、話してるの?お客様にご迷惑でしょう?」
葵は本をバッグから出すと、胡散臭げに占いのページをめくる。
りょう先生はまだ選んでいる。
よっちゃんは妹に席を譲ろうとする。この2人は兄弟なのだ。
不意によっちゃんの席が後ろの学生に当たる。
「うわっ、な、何をするんですか」
眼鏡でそばかすの学生はよっちゃんが恐いようだ。
私は内心、全くもう…と、思う。だから、言わんこっちゃない。
「ご、ごめんなさい…お金なら持ってますから…」
何の話だろう、私は少し興味をもつ。
誰かに虐められているのだろうか?
葵は眼鏡を取り出すと、兄貴の肩をなだめながら、その学生の席に向き直る。
「こんにちは。お金なら盗らないわよ…あなた、中学生?」
「は、はい。そうですけど…何か?」
「私達の作戦にのってくれない?見たところあなた、1人っ子で塾通いのうちの学生のようだけど…」
私は注意深く、その子の容姿を見てみる。
やせっぽちで見るからに虐められっこだ。