世界
「あら、よっちゃんじゃない!」
その青年はプルオーバーに腰パン姿で店内を見回すと、私達に気が付いたようだ。
「なんだ、そんな大声で呼ばなくってもわかる!」
よっちゃんは私達の存在に気付くと、ツカツカと此方にやって来た。
そして、空いている席にドカッと座ると、大声で店員に呼び掛けた。
「レーコー1丁!」
「それは無いと思うわよ。よっちゃん」
りょう先生は微笑を浮かべ注意する。
「あぁなんだ。またこのメンバーか…」
よっちゃんは居心地悪そうに辺りを見回す。
「ふふ、あのね。実はこれから学校に行こうと思っていたとこなの」
「また学校に戻るのか…面倒くさいなぁ」
尚奈ちゃんはさっさとお握りを平らげると私達4人を見回して、葵ちゃんにバスケットを返す。
葵ちゃんはバスケットを受け取ると、よっちゃんにこう告げる。
「全くもう兄貴は行儀が悪いなぁ。おんなじ家柄として恥ずかしいよ。もう…」
「なんだよ。良いじゃん、店内にご飯持ち込んでいる、お前よりましだよ」
「むー」
それはそうかも知れないけど、ピアスだらけ、校則違反のオンパレードのこの子に言われたく無いわよね。
さっさとお会計済ましてしまいましょう。
喫茶店を出ると、やつらは駅のホームを目指して歩きだした。
何故、こうも胃がムカムカするのだろう。
前を行く4人の中に1人だけ俺の見知った顔がある。
俺は出来るだけ、やつらに気付かれないように後ろから一定の距離を保ちながら4人を注意深く見守る。