時間
私の名前は矢井田 りょう。とある中学生で英語教師をしている。受け持っている生徒は36人。
その中でも一番、成績が良かったのが隣で無表情な葵だ。
「葵ちゃん。その服どこで買ったの?」
「知らないわ。母が買ってきたものを適当に選んでいるだけ」
「あらそう、とても良くお似合いだから、ちょっと気になっちゃって」
「えへへー私は謙二に買って貰ったものを着ているよーん」
「あなたには聞いてないわよ。尚奈ちゃん」
「大体ね、あなたはそんなに背が高いんだから、そんなヒールのついた靴なんか履かないで、もう少しラフな服装にゴムサンダルなんかが似合うんじゃないの?」
「むー」
私達はお喋りしながら、駅の構内に喫茶店のドアを開ける。
「私はブラックにするわ。2人はどうする?」
葵ちゃんはさっさとメニューを選び終わると、4人席の向かって右の席に座った。尚奈はその隣に座ると、持って来たリュックサックの中から単語帳を取り出すと、私の方をじっと見る。
「先生!1つ質問があります。自分の名前を書く
時、英語では何でミドルネームを先に書くの?」
「其れはね、主張の一種なの。アメリカでは沢山の民族が暮らして居るでしょう?」
「なるほどね」
尚奈はサンドウィッチを口にほうばりながら、頷いている。
「そうねぇ。私が留学してた時、ニューヨークのかっこ良い叔父様たちが良くこんなカフェでチェスをしながらミドルネームで呼びあって居たものだわ」
カラン、カラン。
「そこのウェイターさん。アイスコーヒーを2つ頼むわ」
その時、店のドアが開いて、1人の青年が入って来た。