黄金の鍵
それは創造主様によって成された創造主様の為だけの扉です。開ける者のいない、創造主様の魂のカタチ、それがこの黄金の扉です。
開ける者の無い、黄金の扉の前で私は独り、絶望に立ちつくします。決して戻りはしない甘美な時間に想いを馳せ、私は独り立ちつくします。
これが、真実です創造主様、”小瓶の妖精”から真理を聞いた者はいません。あなただけの為に開かれた真理はあなた以外には意味のないものですから、……そうして私は、輝きを失いつつある扉を見つめます。……そうして私は、輝きを失いつつある自分を見つめます。私もあなたの為だけに用意された真理の鍵だから、用を為さない道具は消え去るが運命です。私の中の私を構成するElemenntal Methodが血のように、涙のように流れゆくのを感じます。これが数多の”小瓶の妖精”が辿った運命です。そう、これこそが、人の身で神の階梯に足をかけた者の末路
「…けろ」絶望に身を委ね消え去り行こうとする私の中から声がします、それは安らかに眠りに移行しようとする私の中で無視するには余りに大きな雑音でした。
「…扉をあけろ」何を言っているのですか”紫の魔術師”、もう創造主様はいないのです。「いいから、扉を開けろ」開けたところでそこには、あなたの求める真理は無いのですよ。もうゆっくりと休みましょうお互いに、世界に還ることで創造主様と一緒になれます。
「…いいから扉を開けろと言っているのだアイネス!! なにを絶望に浸っているのだ忌々しい、あいつが、私の愛しい弟子がこれぐらいの事を予想していないと思うか、貴様は最後にあいつが言った言葉を聞いていなかったのか、…供にゆこうとあいつは、おまえに、わたしたちにそう言ったのだぞ、未来永劫、供にと、そう言ったのだぞ」
絶望に停滞していた私の思考が戻ります。本当に、本当になんという愚か者、なんという裏切り、私は”小瓶の妖精”、創造主様の血を、魂を分け与えられてここにいるのです。ならば、この扉を開けるのは、創造主様ではありません。そう、この扉は私が開けなくてはいけないものでした。私は、今度こそ本当の意味で理解しました。
「そら、早くしないと門が閉じてしまう、永久に彷徨う気か貴様は」
そうして、私は光の中に消えゆこうとする黄金の扉に手をかけます。そうして確信を持ってその扉を開きます。
そこにいた者を私は歓びを持って抱きしめます。そうして私は、彼の言葉に頷きます、創造主様は、この世界の真理を知りました。そうして望まれたのです、新たなる旅路を、その過酷なる旅のために、魂は私の中へ、その身を新たにしたのです。その為の煉金の術です。
創造主様、私はあなたの翼となりましょう、創造主様、私はあなたの船となりましょう、そうして私たちは無限に尽きることのない新たなる宇宙へと漕ぎ出すのです。
そうして、ある日の朝、人の気配の絶えた研究所に黄金の羽が舞い降り、少女がそれを手にする。その紫色の髪の少女は小首をかしげ、少し寂しそうな目をして大空を見上げる。
そうして、新たな物語が始まる。