真理への階梯三段目
背に機械仕掛けの黄金の翼を広げた妖精がいる。その瞳には様々なる私の欲望が浮かぶ、どれも真理の階梯を駆け上る夢の前には絶えて久しい絶望だ。
その瞳に大粒の涙を浮かべ少女は私を見る。
「何故、泣く、アイネス」
私は泣くしかありません、わたしは知っているのです。これが創造主様との永劫の別れであると、確かに私は紫の魔女を取り込みましたが、彼女の夢と、創造主様の望みはやはり違うのです。彼女の望みは創造主様に愛されること、それは私の望みでもありますが、それは創造主様の望みでは有りません、鍵たる私が真理の鍵と成る為には、その者の魂を用いて扉をすなわち鍵穴を創らねばなりません。
真理の扉を開いたとき、すでにそこに創造主様は居ないのです。なんという悪意、なんという陥穽、これが人の身で世界の真実、その全てをを知りたいと願う者への ……私は思考するのをやめます、機械仕掛けの黄金の翼が私の意志とは関係なく創造主様を、その意図する事とは思えぬ風に、羽毛でできた翼のように優しく包み込みます。創造主様が何かをおっしゃいました。ごめんなさい創造主様、私は最期のその言葉を聞きたくはありません。
そこには、黄金色に輝く扉がありました。扉に描かれるのは扉の元となった者の魂の彫刻が悪意のように燦然と輝いています。