真理への階梯二段目
いいや、それで良いのだ、小瓶の妖精。理解した、お前達の存在を、何故お前が扉を開けぬのか、何故お前が未だ真理の鍵たり得ぬのか、魂すらないその身は、魂ある者に惹かれ、そうしてその者から魂を与えられ、その者の望む真理への鍵となるのだ。それが小瓶の妖精という存在だ。
鏡を見るが良い、アイネス。
また、私の中で、私ではない者の声がします。そうして私は、鏡を見ます。そこに映っていたのは、私ではない私でした。シモンズ=グレイシス=アイネス、いいや、私はお前の中に埋没してゆくのだから、やはりアイネスというのが相応しいか、「結合は上手くいったようだ、身体が羽のように軽いぞ、創造主」私の中の私以外が私の口と身体を勝手に動かし、創造主様にだらしなくしなだれかかります。鏡に映るその姿はどこかいやらしいく、わたしは慌ててその身を離します。何を遠慮しているのだアイネス、こうしたかったのだろう。もう一度よく自身の姿をみろ、お前の望みの一つは叶えてやったのだ、そう拒否することもあるまい。
私は、もう一度鏡を見、その鏡に映る私自身と創造主様を見ます。私は女性の姿をしていました。いいえ、人間の女性の姿をしていました。それはもう小瓶の中の妖精と言える大きさではありませんでした。私は創造主様より少し小柄な人間の女性の姿をしていたのです。
「シモンズ、それともアイネスと呼ぶべきか、とりあえずは シモンズ お前の望みは叶えた、これで確かに私はお前のことを永劫に見続けるだろうよ 真理の鍵が花開き、真理への階梯が見えるまでは」裸の私に紫のケープをかけながら、次はお前の番だと言うように創造主様は言います。
「創造主様、私を見てください、私はあなた様のために居ます。あなたの望みの為のみに存在します。でも望みを叶えてしまえば私には何も残らないのです。教えてください創造主様、私は創造主様の望みを叶えた後、どうすれば良いのでしょう、そうして創造主様、全てを知って貴方様はどうするというのでしょうか、教えてください創造主様、これが私の最後の問いです」私は真摯に自身の想いを乗せて創造主様を見つめます。理解しました|紫色の錬金術師(シモンズ=グレイシス)、私の想いと私に仕掛けられた仕組みを、私は、真理の鍵を開く者として、仕掛けられた門番として、背中で機械仕掛けの羽が開く音がします。