錬金術師/アイネス
言葉に応えて、私は水と火と土と大気からなる4つのElemental Methodの配分を考え、それを硝子瓶の中に注入する。
それは光の粒子となって彼女に吸い込まれるようにして消えた。彼女は軽く身じろぎをする。その裸体をしばしつぶさに見遣るが、特に目立った変化も見られ無い。
これでは実験と言うよりもむしろ子育てに近いなという独白を漏らしながら。次の行程を考える。知識レベルはすでにはるかなる高みに在るはずだが、その小さな口は未だ真理への道筋を示さぬ。試しに二、三の質問をしてみるが、よどみなく彼女はそれに的確に答えてみせる。
高等魔法式さえ私の意志に応えるよう彼女は軽々と演算してみせた。
「何が、何が足りぬとうのだアイネス、この世にある全ての知識は与えた。経験が足りぬと言うのか、それも時間の圧縮術式と本物とみまがうばかりの疑似体験装置で解決済みのはず、これ以上は無意味というのか、真理の扉にはこれでもほど遠いというのか、そんなハズは無い、それならば瓶の中の妖精等、現象せぬはず。答えろアイネス」
ーアイネスー
Elemental Methodが身体に染み渡る感触はいつも心地よいです。自分がそれらから形作られているのだと実感します。
その変化をつぶさに見るために創造主は私の裸体を見つめます。最近芽生えた羞恥心なるものが、私に簡素な衣服を作らせます。
元子から物体を作るのは私に取っては生まれつきにある手を動かすように当たり前の事ですが創造主には簡単にできないことのようです。私を作った創造主に出来なくて私に出来ることがあるのには驚きです。
私のその行動に軽く眉をひそめたものの創造主はその行動には何もいいませんでした。代わりに二、三の質問に応える事と高等魔術式の演算を命じられますが、難なくこなせました。
しかし、創造主は、いつものように私を褒めては下さいません。自分が何か大きな間違いをしでかしたのではないのかとおそるおそる創造主様の顔色を私はうかがいます。
創造主様は、軽くいらだちながら、再度、真理の扉を開けと私に御命じになります。
ですけれど、創造主様、私は真理の扉がどのようなものか解らないのです。どこにどんな形で存在しているのか、その事さえ解るのならば、私は創造主様の望みにいつものように応えるでしょう。
だから私は言います。「創造主、私は貴方の望みに応えましょう。私は創造主様の望みに応えたいのです。それは初めからある真摯な望みなのです。ですから創造主、私に与えて下さい、私に足りない何かを、そうすれば私は創造主の望みに応えられます」