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母親と執事

学園長室にて

「学園長、失礼します」

礼儀正しくノックするアリサに

老いた女性の招き入れる声が耳に入る

砕牙とアリサはその声を聞き

ドアを開いて部屋に入る

「いらっしゃい。アリサさん」

「ご無沙汰しております。学園長」

「ういっす」

一通りの挨拶を終えると

学園長は見ていた書類を机に置き

砕牙達の方へと向き直る

「初めましてかしら、魔龍の影の使い手」

「学園長、この者の名は輝邑砕牙。私のパートナー候補です」

「私の名前はシュブルノ・ダリア。見ての通りこの私立煉獄学園学園長です」

「ども」

「学園長、早速パートナー契約の方を」

「待ちなさい、アリサ」

アリサを言葉を言い切ろうとした時

学園長室に一人の美女と美男子が現れる

「・・・お母様」

「今度は母親か、にしても」

砕牙の目線はアリサの母親の胸元へと向かう

そして、改めてアリサの方を見る

「・・・お前、親父のDNA濃すぎるのか?」

「殺すわよ」

母親も姉同様、アリサとは似ても似つかないほど

体の方は立派に発育していた

「アリサ、その男を選んだというの?」

「ええ、お母様、私はこの愚図と共に臥苦焔祭にて頂点に昇ってみせる」

「アリサお嬢様」

そう言って母親の傍から一歩前に出たのは

見事に漆黒のスーツを着こなした

端整な顔立ちの男性であった

「どうでしょう、クレア様はそちらの方にはまだ納得していないご様子。ここは一つ私にお任せしては戴けないでしょうか?」

男の発言にキッ、と視線をぶつけるアリサ

「ハルカゼ、一体何をするって言うの?」

「簡単です。その者が御嬢様に相応しいか、それを試すのです」

ハルカゼと言われた執事は、砕牙に近付き

顔を息が掛かる距離へと接近させる

「こんにちは、僕の名前はハルカゼ・リュート、クレア様に仕える執事です」

「ちけぇよ、もうちょっと離れろ」

「先程申したように、クレア様は貴方に対し完全に認めた訳ではありません。故に執事である僕が君を試す。それで構いませんね?」

「だからちけぇって、殴るぞ」

「そうですか、ハルカゼ!」

「はっ!」

「アリサ、勝手ながら母がこの男の持つ力を調べさせて貰う。よろしいですね?」

「・・・了承しました」


「ったく、勝手に話進みやがって」

場所は変わって地下闘技場

薄暗い観客席の中

剣闘士の戦う舞台にのみ明るい光が集まる

「貴方の勝利条件は一つ、この僕に一撃でも攻撃を当てる事です」

「あん?そんなんでいいの?」

「ええ、ただし、それが出来ず倒れてしまい先頭不能となった場合、こちらの要求を一つ呑んで貰いましょう」

「あのチビとのパートナー解消じゃねぇのか?」

「負けた場合は勿論そうですが、これは私の要求ですね」

「あん?」

「・・・ふふふ、貴方には私のコレクションの一つになってもらいます」


観客席にて

アリサとクレア、学園長が席に座って眺めていた

「あらあら、またあの子の悪い癖が出たわね」

「どういう事?昔からハルカゼは良い執事だったわ?」

クレアの言葉に疑問を抱くアリサ

「ハルカゼはその、生粋の男色なの」

「・・・砕牙ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


「んあ?」

「絶対に負けたら駄目よ!」

「どういうことだ?」

「ふふ、こういう若干ワイルドな感じも好みですよ。自らの手によって愛らしい奴隷となっていく姿。想像するだけで・・・ゾクゾクします」

「・・・そういうことか」

全てを理解した砕牙は、顔から血の気が引いていく

「このゲイが・・・」

「ホモと言ってほしいな」

「どっちも一緒だボケぇぇぇぇぇ!!!」

叫びながら殴りかかる砕牙

しかし、既に背後に回りこまれていた

「因みに、私の二つ名を教えて差し上げましょう」

「あぁ!」

「瞬迅のハルカゼ、その速さは常人には目視する事も叶わない」

背後に回りこまれただけではなく

既に複数回の攻撃を終えたハルカゼ

砕牙の振りかぶった腕から刃で斬られたような傷が出来ており

そこから流血していた

だが、そんな事はお構い無しに

砕牙は後方へと傷のある右腕を振り回した

「そんな遅い攻撃じゃ僕には当たらない」

「うぜぇな、どうすりゃいいんだ」

その渾身の一撃すらも、ハルカゼは軽く受け止め

そのまま武術を駆使し、砕牙は地面に叩きつけられ

天井を見上げる事になった

「(・・・この変態、強いな)」

「貴方は悪魔神官ザルバを倒したようですが、あの程度で図に乗らないでください。私はザルバなんかよりも遥かに強い」


「砕牙・・・」

「見なさいアリサ、貴方の連れてきたあの男、ハルカゼに手も足も出ていないわ」

「いえお母様、あいつは・・・砕牙は勝つわ」

「・・・どうして?」

「あいつ、まだ好機を窺っている」


「さあ、観念したらどうだい?今諦めれば痛い目に会わずに済むよ」

「お前、なんか勘違いしてねぇか?」

「・・・なんだって?」

「そもそも、痛くないんだわ。こんな掠り傷」

砕牙は立ち上がり、あえて

自分の傷を強く叩いた

「・・・いいでしょう。君を調教するのは骨が折れそうだが、その分熱くなれそうだ」

その瞬間、ハルカゼは武器であるクナイを両手に構え姿を消した

だが、砕牙はこれを待っていた

次の瞬間、奇妙な事が起きた

ハルカゼの体が、砕牙の目の前で不自然に止まっていた

何故なら、人間の体が浮いたまま止まっているからだ

「・・・う、動けない」

「俺のシャドーフールはな、そいつの影に入って動きを操るなんて事も出来んだよ」

「ば、馬鹿な・・・例えそうでも、僕の動きを捕えられる訳が」

「理屈じゃねぇんだよ噛ませ犬。とっとと失せろこの異常性癖者が!」

パキパキと、小気味よく拳の骨を鳴らすと

深く息を吸う

「ダララララララララララララララァァァ!!!」

連続で叩きこまれる拳の連打

吹き飛ばされたハルカゼは、壁に叩きつけられ

そのまま気絶した

「そういえば、一発でいいんだっけ?すまん、やり過ぎた」


「・・・アリサ」

「はい、お母様」

「臥苦焔祭、頑張るのよ」

「はい!」

かくして、砕牙はアリサのパートナーとなった

だが、波乱の幕開けはまだまだ始まったばかりであることに

砕牙自身、何一つ気づいてなかった


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