やってきましたよ悪魔界とさらばしましたよ人間界
「本当にいいの?」
星が見せる綺麗な夜空
山から見えるこの景色
だが、俺の目の前には
赤と黒の不気味な穴が空いていた
「いいっつってんだろ。どうせあそこに居たって意味ねぇし」
「家族とか、その・・・」
「気にすんなって言っただろ。それともあれか?俺が一々そんな事気にするような善人に見えるか?」
「見えないわ、目も腐ってるし、性根も腐ってる」
「百点の回答だ」
「んじゃ、行くわよ」
「おう」
穴を潜るとあれだ
青い猫型たぬきロボのタイムマシソみたいな空間に居た
嘘だ、普通に違う世界だ
と言っても、俺自身驚いている
そこには、外国とかの普通の町の風景が見えた
というか、空の上だし
「おい、これどうにかしないと・・・」
「アンタなら大丈夫でしょ」
「落下確定かよ」
俺はその後、町の噴水に生身で突っ込んだ
自慢にしたくもないが、体が頑丈に出来てる事に感謝している
「さて、着いたわね」
「いや、服ボロボロなんだけど」
「まずは学園に向かいましょう。パートナー申請をしないといけないわ」
「まずこの服だろ。ボロボロだぜ?乳首見えちゃってるぜ?」
「あんた少しは恥じらい持ちなさいよ」
「まっぱに剥くぞクソチビ」
現在、俺たちはアリサの通う学園へと向かっていた
ってか、あれだな
悪魔界っていうから、もっと地獄っぽいところかと思ったぜ
「やっぱアレか、これって人間の勝手な妄想なのかな」
「そうね、実際鬼とか徘徊してるわけじゃないし、所々で拷問器具を見せびらかすような陳腐な光景は見ないわね」
「ふ~ん、ここに鬼はいるのにな」
パンッ!パンッ!
「頑丈でも魔力を込めた弾丸なら穴を空けられるわよ?」
「てめぇ!街中でそんなゴツい銃ぶっ放すんじゃねぇ!しかも二丁!」
「アタシ、元々二丁二刀流だから」
「聞いてねぇし!何気に格好良い特技紹介してんじゃねぇよ!」
「さあ、学園に着いたわよ」
「でけぇな」
「そうね」
「お前は小さいけどね」
パンッパンッ!!!
「デジャビュ」
「次は当てるわ」
「あのな、それは当てる前に言おうぜ」
「・・・間違えたわ、次は殺すわ」
「お前って何?俺を仲間にしたいの?俺を殺したいの?」
「今は後者よ」
「帰りたくなった」
学園への階段を昇りながら
二人がこの会話をしていると、階段先の上方向から声が聞こえてきた
「アリサ、帰ってきたのね」
「お、御姉様!」
「・・・姉貴か」
声の主は、アリサの姉らしい
しかしまあ、同じDNAで出来てる筈なのに
背丈も胸も顔つきも全然違うな
髪の毛は桃色と赤色でまあ近いけど
見た目正反対だな
「そこに居るのが、例の魔龍の影かしら」
「ええ・・・」
「・・・アリサに対して少し言い方が悪いかもしれないけど、やはり私が貴方に相応しい者を見繕った方が良いかしら」
あれ?これさりげなく酷い扱い受けてね?
まあ、慣れてるけどね バイト生活長かったし
「正直言って下界の人間ではね、後々になって後悔する妹の姿や無残に命を散らす者の姿は、心が痛むわ」
「御姉様、安心してください。私は後悔しないし、この下僕は殺しても死にません」
「お姉さん、死ぬからね?普通に死ぬからね?」
「・・・まあ、妹の言い分は尊重したいから、取り敢えずは様子を見るわ」
「分かっていただけて光栄です。御姉様は今からどちらに?」
「・・・赤竜の子の様子を見に行くの。そろそろ訓練を終えている頃合と思ってね」
「そうですか、御姉様こそ気をつけてください。あのエロ猿、御姉様に粗相があろうものならいつでも蜂の巣に・・・」
「ふふふ、ありがとう。でも大丈夫よ、その前に私が躾をするから」
そう言い、アリサの姉は階段を降りていった
「姉貴の名前はなんて言うんだ?」
「ルキア・D・ホロウディオス、私の御姉様で、紅の殲滅士と言われている御方、悔しいけど今の私の実力じゃ歯が立たないわ」
「なんで姉妹で争わなきゃいけないんだよ」
悔しそうに拳を握るアリサに砕牙はそう聞いた
アリサは階段の上で砕牙に振り向き、真直ぐ眼を見つめる
「臥苦焔祭を制するそれはつまり、全ての悪魔の頂点に立つという事。それは例え身内であってもね」
「・・・なあ、所でさっきの赤竜とか魔龍とかって?」
「あんたの影はまだ未成熟な力の形、そして、その力は魔龍の力によるもの。あんたの力は契約する前から分かってたの」
「そうなのか、だから俺を選んだのか」
「それよりも・・・あのエロ猿、名前を聞いただけでも腹が立つわ!」
「・・・あぁ?」
何かを思い出したかのようにこめかみに血管を浮かべるアリサに
砕牙は首を傾げた
学園の地下訓練室
「言われた分のメニューをこなしたかしら?」
「ルキア様!お疲れ様です!」
「ええ、今日は久しぶりに妹に会えたわ」
「アリサお嬢様ですか、ということは、例の魔龍の力を持つ者を下僕に出来たのですね!流石です!」
「ふふ、一応アリサは敵なのよ?余り家族の事を言いたくはないけれど、敵に感心してはいられないわ」
「分かってますよ!確かにアリサお嬢様は強いし優秀だ。でも、それでも俺はルキア様を悪魔の頂点へと導いてみせます!」
「期待してるわよ、私の最強の下僕。赤竜のジーク」
「はい!任せてください!」
ジークと言われた青少年は、汗だくの体を布で拭き取る
傍に置かれた特殊金属製の鉄アレイは、地面へとめり込んだ
「俺は最強のドラゴンの宿主となって、いずれは、全ての女性悪魔を虜にしてみせる!!!」
赤竜のジーク
赤き竜を体内に宿す者
その力の根本は、主への忠誠と
自身の異常なまでの異性への性的欲求によって創られていた