異能力と意外と変わらない日々
「貴様、遂に力を目覚めさせたのか!」
光が収まり、現れる砕牙に叫ぶザルバ
「まあ、そんな所かな」
光が収まったと同時に、呪文を唱え終えたアリサは
その場で力を急に失ったかのように座り込む
「どうした?」
「契約の呪文には相当な体力と魔力がいるの。悪いけど、後は任してもいいかしら?」
「おう、てめぇはそこで座ってろ。あいつは俺が殺す」
砕牙の台詞に血が頭に登ったザルバは
再び光弾を造り連射し始める
「貴様が?俺を?殺すだとぅ!!!」
「あぁ・・・そうだ」
だが、全ての攻撃を避けもせず
一歩、また一歩とその距離を縮めていく
「ふざけるなぁ!たかが人間が、この悪魔神官に敵うと思っているのか!」
「バリバリ思ってるよ、ってか、お前だってただのはぐれじゃん?いつまでも過去の栄光引きずってんなよカッコわりぃ」
「くそがぁ!」
連射を止め、光の剣を両手に形成すると
ザルバは、一気に砕牙の懐に飛び込もうとする
だが、砕牙はそれを狙っていた
自分の距離である・・・近距離戦を
「確か、契約すると俺の力が目覚めるっつったよな」
「・・・しまった!」
「見せてやるよ、俺の・・・力って奴を!」
突如、砕牙の背後から現れた黒い人型の影
それを見て、ザルバは接近をやめるが
既に射程圏内であり、最早何もかもが遅かった
「愚かなる影・・・シャドウ・フール!!!」
『ダラララララララララララララァァァ!!!』
背後から現れた人型の影・・・シャドウ・フール
握られた拳は、目の前の敵へと
何度も何度も何度も
相手が地に伏し倒れるまで、降り注がれる
「ぐはぁぁぁ!!!」
「俺からも一発プレゼントだ。もってけ糞悪魔!!!」
バキィッッッ!!!
砕牙自身の渾身の拳が、豪快にザルバの顔面を殴り抜け
近くに生えてある木に吹き飛ばされるも
更に木をへし折り奥へと吹き飛んだ
「か・・・は」
「っけ、思ったより脆いんだよ。乳牛と相談しとけバカヤロー」
「助けてくれてありがとう」
「別に、助けてねぇよ。あ~あ、請求しようにもあいつがあんなんじゃあな」
「死んでるの?」
「あぁ、息してないし、文字通り撲殺だ」
「・・・これから私はザルバを悪魔界に連行するわ。いつ戻るか分からないけど」
「そうか、まあ行って来い」
「砕牙!」
背を向けて立ち去ろうとした砕牙にアリサは叫ぶ
「きっと・・・あんたは強くなる。そして、私を悪魔界の女王に導いてくれる。そう、信じてるから!」
「・・・っけ、とっとと行けよチビ姫、仕事あんだろ?」
アリサは砕牙の言葉を聞くと、ザルバを連れて
空中に創ったワープゲートでその場から消えた
はぐれ悪魔の騒動から次の日
仕事終わりに家に帰ると、いつも騒ぐアリサがいなかった
「・・・いないか、ったく人を化け物にしといて勝手に行くか普通」
家中探してもいない為、戻ってきていないと思った
「まあいいか、これでようやく、いつも通りのフリーター生活だ」
砕牙はいつも通り、自室に向かい夕飯を食べようとしていた
ドアを開けた瞬間、最早見慣れた顔がそこに居た
「・・・よう、もうコンビニ弁当は飽きたんだ。下僕でもなんでもいいから俺に美味い物食わせてくれよ」
その言葉に、自分のベッドの上で踏ん反り返る
小柄で幼い顔をした可愛らしい悪魔は、小さく笑った