千歳越えの少女
富だ?
名誉だ?
力だ?
んなもんいらねえよ。ドブにでも捨てちまえばいい。
欲しいものはかわいい彼女だ。そう──
「俺は彼女がほしい」
「え?」
彼女がほしいなんて予想を大きく外れたせいなのか不幸ちゃんはぽかんとした表情を浮かべている。
「彼女をください」
「ふふっ、彼女ってあなた。そんなものでいいの?」
そんなもの?
そんなものだって?
否!断じて否!
「富や名誉。そんなものは努力すれば自ずとして結果になって付いてくるんだよ。だがな、彼女ってものはそうはいかない。努力しても100%成功するとは限らないんだ。人の心が関係してくるからな。昔、俺は一人の女の子に恋をしたんだ。だけど……だけどっ!」
告白の答えを先延ばしにされた俺は一か月、答えを忠犬ハチ公の如く静かに待った。
しかし、答えをドキドキ待ちながら生活していた俺に一つの凶報が舞い込んできた。
その女の子に彼氏ができたらしい、と
俺はすぐさま確認をとりに彼女のもとへ向かったが、向かった先で
≪あれ、まだ待ってたの?普通一か月も返事が来なかったらフラれたって思うでしょ。ただ待ってるだけのハチ公じゃないんだから少しは考えて行動しなよ≫
と、酷い言葉を叩き付けられた。
それから俺は毎晩枕を濡らした。
「分かったから、そんなに涙を流してまで話さなくても……。それじゃあ、あなたの願いを叶えるわ。その女の子と付き合いたいの?それともまた違う女の子?」
「不幸ちゃん」
「私!?」
「不幸ちゃんほどの超絶可愛い女の子は俺の周りにいないからな。しかも神様だろ?もう文句のつけようのないほど完璧じゃないか」
俺の彼女は神様なんだぜ?いや可愛いから女神様だな!って自慢はできないけどな。もし、そんなこと言っているやつがいたら俺なら関わりたくはないね。
「か、かわいいって……。しかも完璧って……」
先ほどとはまた違った理由で頬を赤く染める不幸ちゃん。りんごみたいでかわいい。食べてみたら甘いだろうな。
「千年以上も生きてまさか恋愛経験がないなんてことは……」
「仕方ないじゃない!まわりの男の人なんておじいちゃんばっかりなんだから!」
「いや、不幸ちゃんは俺からしたらおばあちゃんを越えて生きた化石なんだけ腕が焼けるように痛いっっ!!」
「年齢のことは気にしちゃだめよ?」
「イエス、マム」
腕が焼けるように痛いと表現したが、実際に俺の腕はどこからともなく現れた豪炎に焼かれ瞬時に再生されたのだった。
これ拷問に使ったら相当エグいことになるんじゃないかな。
エンドレスな激痛で俺の精神が忘却の彼方へと引っ越ししそう。
「それで、俺と付き合ってくれるのか?」
唐突な俺の一世紀最大の告白。
そう、君に届け。
因みに、このフラれ方は以前の私がされたフラれ方です。
答えを出す前に他の人と付き合うなんて、その人は他人の気持ちを考えることができない可哀そうな人なのだろうと思いましたね。