俺の願い
外に出てみると、空は雲一つない快晴。澄み渡るような青だ。
草木の上に乗っている雨露が太陽の光に反射して、まるで草木に真珠が張り付いているようだった。
「こいつは笑えねえ……」
「どう?すごいでしょ」
えへんと無い胸を張り体を大きく見せようとする不幸ちゃん。
こんなに可愛いのにおっかない力を持っているものだ。
「もしかして、異世界とか行けちゃったり……する?」
おそるおそる聞いてみる。
まず異世界があるってところからハードルが高いけれど、まさかな。
「んー、別世界の神様のところに委託申請とか、こっちの御偉いさんのところに人間移送届けを提出しないといけないから好きじゃないけど一応可能よ。でもやめてよね。書類を書くの本当に面倒なんだから」
マジかよ。
異世界トリップとか本当にあったのか。
これは少し行ってみたい気もする。
「なあ」
「なあに?」
「なんでも……できるんだよな」
「なんでもはできないけど、大概の願いなら叶えることはできると思うわよ」
異世界に行って勇者にもなりたい。お金をたくさんもらって遊んで暮らしたい。
だけど、そんな願いは俺の本当の願いなんかじゃない。
俺の叶えたい願いはただ一つ。小学五年生からの切実な願いだ。
しかし、高校生になった今でもその願いが果たされたことは一度もなかった。
健全な男子なら一回は願ったことはあるはずだ。
彼女がほしい、と。