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不幸の幸福  作者: PC
3/9

いつもの場所

「ふーんふーんふーん」


 いやー、ラッキーだったぜ。

 

行きつけのコンビニで、

 お気に入りのパン、

 お気に入りのおにぎり、

 更にはお気に入りのミルクティーまでが三割引きだなんて。

 これはいい買い物をした。


 貴重なお小遣いの消費を抑えられた嬉しさに思わず鼻歌を歌ってしまう。

 

 いつもは変な色をした石が散乱してある薄汚い不幸穴の中だが、

 心なしか今日は少しだけ天然記念物並みのオーラが出ている気がする。

 あくまで気がするだけだが。

 

しかし、消費期限が近付くにつれて安くなるシステムはお金の少ない学生にとって本当に助かるシステムだ。

 たかが数十円、十数円の雀の涙ほどの差なのだが塵も積もれば山となる。

 こういう節約を数百回繰り返していったら膨大な金額になってくる。

 そこの学生も割引商品があったら積極的に買っていくんだぞ。


 おや?雨が降ってきたようだな。

 

 外を見ると鉛色をした空から無数の滴が地上に降り注いでいた。

 日に焼かれたアスファルトが雨によって冷やされていく。

 この時の夏特有のくぐもったような臭いが俺は昔から好きだ。

 雨が地面を打ち付ける音がどんどん強くなっていく。

 

 コンビニをでたころから雲行きが怪しいと思っていたが雨にうたれないでよかった。

 せっかく、いい気分なのに雨に濡れてしまっては気分もダダ下がりだからな。


 さてさて、そろそろ食べるとしますか。

 まずはおにぎりだ。

 具はシーチキンマヨ。


 えー、シーチキンマヨ?

 なんでまたそんな地味なのを(笑)

 男子高校生なら肉とかガッツリ食えよー。

 

 なんて馬鹿なことを言い出す奴らもいるが、

 そいつらは具にたどり着いたときに鼻に広がるマヨネーズの風味。

 マヨネーズにコーティングされながらお米と踊りだすシーチキン。

 このマヨとシーチキンとお米の奏でる三重奏を知らないのだ。

 

 とりあえず肉食っとけ精神は正直賛同できないな。


 おっと、シーチキンマヨの説明に熱を入れてしまっていた。

 早く食べてあげなければおにぎりもかわいそうだ。


 おにぎりを包んでいる袋の真ん中をペリリと剥がす。

 そのあと残った両端をつまんでそっと引き剥がしていく。

 んー海苔のいい香り。

 海苔の間からちらりと見える白い肌がなんとも眩しい。 


 早く私を食べて!

 と誘っているようにしか見えない。


 ハハ、そう急かすでない。

 今おいしくいただいてやろう。


 今、目の前に広がるおにぎり。


 「いただきまーす」

 

 今、目の前から消えたおにぎり。


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