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第一話投稿です
遅筆ですが頑張ります
春の陽気から夏へと代わるそんな時期に差し掛かっている、俺がこの町の住人として認められて一週間が過ぎた・・・と言っても何も変わったことはなく日々平穏である
「ふぁ〜あ・・・ねみぃ」
俺は、雑貨屋兼便利屋のカプリコーン店内でカウンターテーブルに頬杖を突きながら欠伸をした
まだ夏と言うには少し早く涼しさと暖かい日差しが眠気を誘ったのだ
そんな気だるげな空気を吹き飛ばすかのように勢いよく店の扉が開いた
「よー!ハルキは居るか?」
店に入ってきたのは20歳位の青年で屈託の無い笑みを浮かべている、高い身長と相まって町を歩けば6・7割の女性が振り向くだろう容姿のイケメンだ
「アル・・・扉はもっと静かに開けろよ」
彼はアルベロ・ローレンと言って俺の悪友だ歳も(多分)近く気が合うのでよく休日等につるんでいる
ただコイツには問題があって・・・
「わりわり、でよ依頼何だけどいいか?」
「またかよ、今度はなんだ?」
俺は頬杖のまま聞き返した
「いやな、フェアリーズムーンってカフェ知ってるか?」
「あぁ・・・」
「そこで双子の美人姉妹が仕事してんだけどナンパするの手伝え」
俺は頬杖ごとカウンターからずり落ちた
そうアルベロの問題とはこの軽い性格だ、コイツからの誘いや依頼は女がらみばかりなのだ
「アル、お前この前ナンパした娘はどうした?まだ2日と経ってねぇだろ」
「ん?合鍵もらった」
そう言ってアルベロは満面の笑みで鍵を見せてきた
「お前ねぇ…そのうちに女に刺されるぞ」
俺はこめかみを押さえながら言う、何か頭痛がしてきた
「女に殺されんなら本望さ!」
アルベロはと言うと何とも爽やかな笑顔で言い切りやがった・・・何か今ここで俺が刺した方が世の中の為ではなかろうか・・・等と精神的に痛む頭を押さえながら不穏当な事を考えていたら不意に店の扉が開いた
「あの〜リシェさんいますかぁ?」
入ってきたのは自警団員のリットと言う顔馴染みの青年だった
余談だが俺の住人登録をしてくれたのも彼だ
「よ〜リットじゃねぇか!どうした」
俺より先にアルベロが声をかける
「げっ!アル・・・何でこんな所にっ」
「げっ!っとは何だよいちゃわりぃかよ」
この二人は幼馴染みなのだそうだ、性格の軽いアルベロとどちらかと言えば真面目なリット・・・想像しただけでリットの苦労が忍ばれる
「アルがここに居るのは、まぁ何時もの下らない依頼でだが、リットはどうした?リシェさんは今出てるけど」
「そうか・・・まぁハルにも関係あるだろうし、悪いがリシェさんにも伝えてくれるか?」
「あぁ、いいぞ」
うなずいて返すとリットは話始めた
「最近な、森に近い牧場で家畜が襲われてな」
「灰色狼じゃねーの?」
アルベロが口を挟む、灰色狼とは大型犬を更に一回り大きくしたぐらいの体躯を持つ魔物で4・5匹の群で狩りをするのだが
「灰色狼なんて森の奥に行かないと出て来ないだろ」
そう、灰色狼は森の奥に棲んでおり滅多なことでは人里までおりては来ないのだ
「まぁな、でも自警団としては不安がってる住民がいればどうにかしなきゃならんし・・・」
そこでリットは一度話を切った、どうやらここからが本題らしい
「って事で森の辺りを巡回してたんだけどな、深夜過ぎたあたりで咆哮が聞こえたんだよ」
「咆哮?灰色狼のじゃなくてか?」
「いや、ああいう遠吠えみたいなのじゃなくてな・・・こう何て言うかもっとでかいヤツが怒ってるみたいな」
「まさかそんなでかいのがいるわけねーだろ、リットお前が寝惚けてたんじゃねーの?」
アルベロが冷やかすが、リットは真面目なまま言い返す
「それこそまさかだ、咆哮を聞いたのは俺だけじゃない、一緒に巡回してた団長や同僚も聞いてたんだよ・・・で団長がもしかしたら魔獣かも知れないからって」
「なるほど、正体が解るまで森に近付くなってリシェさんに伝えればいいのな?」
「ああ、それからハルにも森の見廻りを手伝って欲しくてな」
シルフェリアのような田舎町では自警団だけでは手が足りないことがありそう言う時のため住民もある程度闘えるように訓練している(皆が皆ではないが)
「あぁ、いいぜ」
俺がうなずいて返すとアルベロが手を挙げた
「はいっ!はいっ!俺も参加、報酬出んだろ〜助かるなぁ、デート資金カツカツだったんだよ♪」
「「お前ねぇ…」」
俺とリットは同時にリーヴァイア湖より深い溜め息をついた
魔物と魔獣の違いについて
魔物・・・この世界に元から存在する生物、また野生動物や植物の中でも魔力によって身体能力が底上げされた生き物を指す、動物とほぼ同義である
魔獣・・・過去の戦争中に造られた合成獣や人為的に魔法等で強化又は狂暴化された魔物が野生化したものを指す、現在は魔獣を故意に産み出すことは禁止されている