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晴れのち僕と彼女

晴れのち僕と彼女③

作者:

『6月のち梅雨と僕』

 彼女と日曜日に会ってから、僕らの住んでいるところはすぐに梅雨の季節へとなった。

 毎日毎日教室の窓から空を見る日が続いている。今も授業中にも係わらず、僕は教室からどんよりとした空を見ていた。僕はあれ以来、彼女と会えていなかった。

 彼女は元気だろうか。ふとそんなことが頭に浮かんだ。


 今更だが僕は彼女のことをほとんど知らない。


知っているのは顔と髪の毛が長くて綺麗なこと、晴れの日が好きなこと、携帯電話を持っていないこと。

僕はそれしか彼女のことを知らない。ほとんど知らない。

名前も、年齢も、どこに住んでいて何をしているのかも・・・。

彼女も僕のことをほとんど知らないだろう。知っているはずがない。

僕はため息をつきながら教科書に顔をうずめた。


教科書を少し離して周りのクラスメイトを見る。

僕はクラスメイトの顔しかしらない。未だに全員の名前すら覚えていない。何が好きで、何が嫌いなのかも知らない。もしかすると・・・彼女のことよりなにも知らないかもしれない。

今までは気にならなかった。誰が何をしようと、誰が何を思っているかも。僕が何をしようとも、僕がどう思っているかも別に知ってもらわなくて良いと思っていた。僕は、はっきり言って人が好きじゃなかったから。ほとんどが見かけや、境遇で判断するから。


彼女と出会って、自分がどれだけ他人に無関心だったか、自分がどれだけ他人のことをわかろうとしなかったか実感した。

自分が他人のことをわかろうとしなければ、他人が自分のことをわかろうとしてくれる訳がない。そんなこと分かっていると思っていた。しかし僕は分かっていなかった。

僕のほうが人を見かけだけで判断していた・・・。

こんなんじゃ友達なんて出来る訳がない。

こんな僕と上辺だけでも一緒に居てくれる人ともっと話してみようと思った。









その日の昼休み。僕は一緒に居る人と、今までに無いくらい話した。最初はどう話しをどう切り出そうか悩んだが、一度話すとあとは楽だった。僕とその友達は好きなバンドが一緒だった。それだけのことだが、僕はそんなことも知らなかった。

僕はその友達に好きなバンドのCDを貸すことを約束し、家に帰った。

とても久しぶりに学校に居ることが苦痛ではなかった。


 家に帰り一人夕食を食べながらテレビを見る。明日は雨が降らないらしい。天気予報のお姉さんが言っていた。たまった洗濯物を乾かすのに丁度いい日だと。

明日は早めに起きて洗濯物を片付けてしまおう。僕はそう思いながら食べ終わった夕食を片付けた。

テレビではまだお天気お姉さんが何か言っている。

『明日の土曜日は絶好の行楽日和でしょう』

「明日は土曜日か・・・」

 僕は小さくつぶやいた。

そして彼女と晴れた日の川原を思い出していた。川原で偶然会って、2回しか会ったことがないし、そんなに話もしていない。それなのに僕の中をどんどん変えてくれる人。

彼女は元気だろうか。今日、教室で思ったことを思い出した。

不思議だ・・・彼女と会ってから何故か楽しい。

今日もそうだった。彼女のことを考えると自分のことが見えてくる。

今まで気づかなかったことに気づいたり、今までしようと思わなかったことを思ったり。そういうことは彼女と会わなかったら僕はそのまま気づかずにいた。気づけてよかったと本当に思う。

明日、川原に行ってみよう。僕はそう思った。




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