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日常 続

東方から逃げ切った千春は、体育館の裏で一人考えていた。

放課後の屋上にはこれからは行けないということについてだ。

おそらく、東方は生徒会としての仕事で見回っていたのだろう。

そうなると今後、屋上には行けないと考えた。

千春は難しい顔をして歩き始める。

今日は大人しく帰ることにしよう。

裏を出ようとした途端、ふと声が聞こえた。


「・・・・・けて」

「お・・!・・ざけ・・・ぞ!」


千春はこの声が何なのか把握した。

多分、どっかの生徒が誰かを虐めているのだろう。

後ろから聞こえるので、距離はあまりない。

お人好しの所為か、千春の足は声のする方に動いていた。

近付くにつれて、その声もはっきり聞こえてきた。


「なぁ?金返してくれるんじゃねーのか、よ!」

「で、でも昨日返したはずじゃ・・・っ!」


千春は思わず「うわ・・」と声を出してしまった。

さすがは治安の悪い高校だ。容赦ないな。

千春は近くの壁に隠れて、声のする方を見る。

倒れている女子生徒。ポケットに手を突っ込んでる日向の姿。


「金がねぇなら、何で返してくれるんだ?」

「・・・・・・」

「答えろ !」


日向の言葉は最後まで続かなかった。

千春はあるがままに拳を日向の頭に振り落としていた。

腕力のない千春には、これが適切だと思ったからだ。

殴っただけではこちらは不利だ。

なら振り落とそう、と千春はすぐに決行した。

「ごふっ!」と日向が反射的に後ろを向く。


「お、お前は!?」

「女に手を出すお前に次の言葉を言わせない」


千春は冷静に言い放つ。

あのとき日向をぶっ飛ばしたときは、確か手を前に突き出したな。

そう思い、千春は手を日向の方に突き出す。

それだけで日向は化物を見るような眼になる。

しかし、待つこと5秒、何も起きない。

千春は疑問に思い、手を引っ込めて見つめる。

おかしいな、と思った瞬間には千春は後方に吹っ飛んでいた。

腹に激痛が走る。腹を蹴られたらしい。


「ぅ・・・!」


呻き声を上げないように振り絞ったが、前のようには行かない。

千春は腹を抱えたまま膝を付いた。


「あービビったわ。あんなの普通じゃねーからなァ。何しろ現実味がない。そうだろ?秋宮千春ちゃん?」

「ひ、日向さん!その人は関係ないじゃないですか!!」


日向の後ろで、先ほど倒れていた女子生徒が立ち上がって言う。

千春は息を整えながら立ち上がると、気付いたことがあった。

日向をぶっ飛ばしたとき、何を考えただろうか。

思考があまり出来ない中、日向が千春に近付く。


「・・・やっぱお前、弱くなったな。いやそれが普通か」

「・・・・・はい?」


しゃがみ込んだ日向は千春の額をデコピンする。

呆気に取られる千春を見ながら、楽しそうに笑う。

千春の頭の中には疑問だらけで、意味がわからないような動作を取り続ける。


「何か、蹴ったらすっきりしたわ。お前シバく理由もなくなったし」

「・・・はぁ」


思わず溜め息の千春。

そりゃそうだ。いきなり何もしなくなったんだから。

キョトンと日向の顔を覗く千春は阿呆そうに口を開ける。


「んじゃあな。千春ちゃんよ」


もはや怒る気力もない。

もしかしたら、こいつはいい奴なのかもと思いながら立ち上がる。

日向はもう一人の女子の襟元を掴んでどっかに去っていった。

助けを求めているように手を私に向かって突き出している。

千春は片手を上げて「悪い」と口を動かしながら立ち去った。

後ろから「この裏切り者ぉぉぉぉ!」と聞こえるが、あえて無視する。

全てが突然すぎて頭が痛いと思った千春であった。

やる気が失せた千春はもう帰ろうと思うのであった。

我が家を思い浮かべると、何だか、より頭が痛くなった。

身体が引っ張られる錯覚に陥り、つい顔を引きつる。

思わず目を瞑ると、周りの空気が爆せた。

爆せたと言うより、変わったと言う方が適切だろう。

訳がわからくなり、目を開ける。

そこは体育館裏ではなく、見慣れた我が家であった。


「・・・さて、いよいよ以て訳がわからないな」





テレポートというのをご存知だろうか。

それは今いる場所から別の場所に瞬間移動することである。

千春が体験したこともこれの一種である。

現在、千春は自室のベッドに横たわっていた。

またしても違う力を発見し、どっと疲れているのだ。

唸る千春は手足をバタバタさせる。


「・・・普通の生活じゃなくなってる気がする」


千春は身体を起こしながら呟く。

頭を下に向けて、さらに溜め息を吐く。

一体、何回目の溜め息だろうか。

さらさらと流れる髪を見ながら思う。

女心はないが、少し自分に対する意識を変えてみようと思った千春はベッドに座る。

どこまでが女であって、どこまでが男なのか。

新たな疑問を発見した千春であった。

が、その刹那


「千春ぅー!洋服買ってき・・・・・何やってんの?」


秋葉が見たものは絶望してもいいものだった。

両手をベッドに下ろして、両足を後ろに折り曲げている千春の姿。

どこからどうみてもセクシーポーズだった。


「・・・うぉぇ」

「吐くな!てか誤解だ!」


吐くのを抑えた秋葉はじろりと千春を睨む。


「あ、あんた、そんな趣味だったのね・・・」

「だから違うわっ!」


千春は声を荒げて言う。

秋葉もわかってくれた様子だが、イマイチなようだ。

まあ千春にはそんな趣味は一切ないので、ただの秋葉の勘違いだ。

さっき思ったことを秋葉に正直に伝える。


「身体のことなんか別に気にしなくていんじゃない?あ、はい。これ服ね。来たら写メよろ」


そう言い残して去っていく秋葉。

誤解を免れたのか、それとも免れてないのか、よくわからなかった。

秋葉が置いてった箱に手をかける。

開けると、そこにはいろんなブランドの服。

おそらく買ってきてくれたのだろうと思い、服を手に取りながら心の中で感謝する。

が、千春が見たものは酷いものだった。


「・・・・・あのクソ姉。俺にこれ着ろってか?」


フリフリのついたスカートである。

まだある。胸開きの大きい服、ミニスカート、ゴスロリ、などなど。

千春は秋葉に対する印象を変えねばならないと思った。

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