学校にて
できれば感想おねがいします。
「で?朝、起きたら女になってたと・・・」
リビングのテーブルに向かい合うように座る秋葉と千春。
秋葉は一通りの説明を受けた後、おもわず唸っていた。
現実にそんなことがあるのか、と。
しかし、現実には既にそれが実在しているのだ。
秋葉は千春の姿をじろじろと眺めると、目線は胸へと向かった。
「っ!何で私より胸があるのよっ!」
「注目する場所が違うだろ!どこ見てる!」
千春は腕で胸を隠して秋葉を睨み付ける。
自分でも嫌な格好だと思った千春は、自重して腕組みをする。
腕組みをするにも、腕に胸が当たってしまい、つい赤面する。
秋葉はそんな千春を見て、心底面白そうだが、ちっとも笑えない。
いろんな思いが巡ったからか、秋葉は腹を立ててテーブルを両手で叩いた。
「とにかく!アンタは学校に行きなさい。いろいろ調べてみるから」
秋葉の言葉に絶句する千春。
「まさか、俺はこの格好で学校に行くのか!?」
「当たり前でしょうが。金払ってるのは親なんだよ?両親は夜帰ってくるから、それからだね」
千春は改めて自分の姿を確認する。
黒髪で大きめの胸。
男であったときの面影なんてなかった。
まあ、性格は変わってないので、そこは何とかなるだろう。
学校のみんなが知ったら、一体どれだけの人間が軽蔑するだろう。
いや、元々千春は外見は不良だったからあまり変わるまい。
しかし、今まで千春を恨んでいた生徒はこれがきっかけとなり、襲い掛かってくるだろう。
そう思うと、身震いがした。
威圧的な存在がか弱い存在になったのだ。
自分が襲われるのを想像すると、震えが増した。
だが、いざとなったら、空を飛んで逃げればいい。
「ん?どうした?顔色悪いよ?」
「・・・いや、何でも。しょうがないから行くよ」
千春は眉間を押さえながら、椅子から立ち上がる。
気付いてみれば既に8時を回っている頃であった。
光太郎には会いたくないが、結局は会わなければならないのだ。
自室に向かい、制服に着替える千春。
胸などには、きちんとブラジャーをし(秋葉に強制的に着替えさせられた)家を出るのであった。
‡
いつもの坂のはずなのに、こんなに疲れるとは思っていなかった千春であった。
「・・目線が痛すぎる」
坂を歩く学生の視線は千春の元に向かった。
男子の学生服を女子が着ているのだ。
その光景は確かに異質であったが、周りの学生諸君はそんな神秘的な千春を見て見惚れていた。
千春本人はその視線を、嫌なもので下劣だと思っている。
全くもって鈍感であった。
嫌な顔をしながら辺りを見る千春は、後ろを見た途端、ギョッとした。
光太郎が頬を染めながら、ボーっと千春を見ていたからだ。
千春は口をひきつらせながら、歩みを遅めて光太郎の隣に移動する。
「ふぇ!?何ですか!?」
「頬を染めて話すな。気持ち悪いな」
「うっ!初対面に言われる筋合いなくね?」
「光太郎、怒っていいか?」
理不尽な苛立ちを感じた千春は額に青筋を浮かべた。
なぜキレられたのかわからない光太郎はそのままオドオドとし始める。
・・・人を虐めるのは楽しいな。
普通でないことを思う千春であった。
「ま、いいや。どうせ学校行ったらわかるんだからな」
「―――?」
光太郎にそう言って、千春は歩みを速めるのであった。
まずは職員室に行って、事情を説明しよう。
そう思い、学校へ向かった。
‡
「――ということで、秋宮千春君は女になったそうなので、みんな仲良くしてあげてね」
結構信じられないものかと思っていたが、教師はあっさりと信じ込んだ。
千春は一言二言を言っただけなのに、だ。
うんうんと頷く教師に、なぜこんなすぐに信じるのかを聞いてみると、ごもっともな答えが返ってきた。
『制服もそうかもしれんが、威圧感や目つき、喋り方までが本人じゃないか』
確かにそうであったが、威圧感は間違っているのではないか?
千春は変なところを考えながら席に座っていると、HRが終わるチャイムが鳴った。
教師が廊下へ出ると、教室内は騒がしくなった。
おそらくは千春の変化についてだろう。
誰もが千春に寄れない中、光太郎が後ろから話しかけてきた。
「ま、まさか千春だったなんて・・・。恋心が揺れた俺は何だったんだろ」
「体は女でもコレだからな。みんな寄って来る気配は無しだ」
千春は少し顔を曇らせたが、光太郎は気付かず。
気付けばクラス中の女子が千春に視線を送っている。
そんな視線に気付きもしない千春であった。
二人の鈍感さに顔をしかめる男子達であった。
「おい」
その声は千春でも光太郎でもない、第三者からであった。
千春は後ろを向き、声の主を確認する。
髪を赤に染めて、ウニのようにとがらせている。
その後ろには二人の生徒。おそらくは仲間か。
「・・確か隣のクラスの日向?だっけ?」
記憶を辿り思い出す千春。
「・・・んー?俺、何かした?」
しらばっくれる千春に、日向は指を鳴らす。
「毎回昼の購買で殴り倒されてんだよ!忘れたとは言わせねぇ!」
そういえば、と頭の中で思い出す。
馬鹿みたいに手を納得したかのように叩く千春。
最前列に割り込みし、購買のおばちゃんを困らせてる奴だ。
そのときの千春はちゃんと順番通りに並び、いつも前から三番目ぐらいだ。
視界に広がる赤い髪が千春の機嫌を狂わせる。
よって、パンの名前を言う直前に前に回り込み顔面を殴りつける。
こんな毎日がここ最近なのだ。
「あー・・・、だって俺、カレーパン大好きなんだもん。お前、取ろうとするだろ?」
「なっ!なぜ俺がカレーパンを取ると知っている!?」
「倒れた後に、涙流しながらブツブツ言ってんじゃねーか」
「知ってんなら、1日くらい許せよ!なあ、千春"ちゃん"?」
ピクッと千春の耳が動く。
千春の頭の中には女扱いされた言葉が漂っている。
同時に起こされるのは殺意であった。
ありったけの殺意を目線で飛ばし、日向を見る。
ヘラヘラした面をした日向は、その殺気を受け止め、ついにやける。
「なぁ、日向よ」
「ヘヘヘ・・・何だよ。千春"ちゃん"」
「俺を、女扱いするな」
そう言い、席から立ち上がる千春。
二人の間に不吉な空気が漂い、クラス一同は教室の後ろに下がる。
チャイムの音など、眼中にない。
「千春"ちゃん"よ。女になったからって手加減すると思ってんじゃねーぞ」
「その台詞は死亡フラグだ」
千春が言い終わると同時に日向の拳が顔面に飛んでくる。
それを受け止めるように、手をかざし受ける。
そのはずが、受け取るどころか、体まで吹き飛ばされた。
受け身をとり起きあがるが、そのまま防御出来ずに腹に蹴りをくらった。
「がはっ!」
「おいおい。急に弱くなったな。ま、そりゃそうか」
女の子だもんな、と付け足す日向。
千春はもろにくらった蹴りが痛すぎて、地に頭をついていた。
女であったことが、こんな幸いを呼んだのだ。
クラスの連中もただ動揺するだけで助けなど来ない。
千春は絶望した。この状況、この関係に。
日向はそんな千春の元にしゃがみ、口を開く。
「そういや、お前に鼻の骨折られたことあるな。この分も殴るか」
拳に力を入れる日向にピクッと震える千春。
こんなの自分じゃない、などと考えるがどうにもならず。
拳が上がったところで、千春は情けのない声を漏らす。
「い、いやっ!」
手を前に突き出し防御体制を取る。
が、防御とは逆に、何かの力が働き日向は吹き飛ばされた。
手から何かが出たわけではない。
おそらく、空を飛んだのと同じ力で吹き飛ばしたのだ。
そのまま日向は机をなぎ倒す形となり、後方まで吹っ飛んでいく。
沈黙の後、日向は我に返ったかのように起き上がり、逃げ腰となる。
「な、何なんだよ。お前・・・!」
日向は化物を見るような目をしながら震える。
そのまま逃げようとする日向の襟を、誰かが掴んだ。
「ひっ!」
「日向悠真くん、だっけ?机直しなさいよ。後、秋宮くんにも謝りなさい」
眼鏡をかけたポニーテールな女子が日向に命令する。
が、日向は既にパニック状態であった。
残り二人の仲間はとっくに逃げ出していた。
「やめろ!触るな!近寄るな!・・・来るな!」
力で振り抜き逃げる日向であった。
「こら!待ちなさいよ!・・・・ったく。あ、大丈夫?」
その女子は千春に手を差し伸べる。
その他の生徒諸君は散らばった机を戻したりしている。
まあそれは、只今授業中だからである。
地理教師はボケーッとして、禿げた頭をボリボリとかいていた。
千春はその状態のこのクラスを見て、つい鼻で笑う。
受け答えに対して、千春はその手を掴むのであった。
「千春くん・・・でいいかな?知ってると思うけど、私は秋山加奈子よ。友達になりましょ?」
「・・いろいろ迷惑かけてすまないな。今後宜しく」
こうして、新たな友達ができるのであった。
はい。お友達できましたね。