夜天ヲ駆ケシ蒼キ月光
タイトルがなんか中二病、ぽい?気にするな!
ニーズヘッグ戦終了です。
特殊技能には、もう一つ種類がある。
それは現実技能。
普通の特殊技能は魔物のいる別次元でしか発動できない。
だが稀に、現実世界でも発動する特殊技能をもつ魔狩が現れるのだ。その魔狩が持っているのが現実技能だ。
しかし大概の場合、力に飲み込まれ、暴走する。世界的にも、この事は問題になっている。
逆に言えば、力の制御さえ出来れば非常に有用なのだが。しかし力の制御は難しく、特訓しようとして力に飲み込まれた者も多い。
彼・・・現実技能、全力解放を持つ秋斗も一時は力に飲まれた者だった。
過去に彼を傷つける出来事があった。これがトリガーとなり、力の覚醒と共に暴走。危うく人を殺めかけた。
普通の人なら、この段階で精神がやられ、中には自殺する者もいる。世界の問題としても、個人の問題としても、力の暴走は深刻な事なのだ。
しかし秋斗はめげなかった。
最初は秋斗も生きる希望を失ったかのように元気を無くした。しかし彼の仲間が、幼馴染達が彼の支えとなって、秋斗の精神を復活させた。
彼らがいなかったら、秋斗もまた、自殺志願者になっていたかもしれない。
そして秋斗は力を前向きに捉えるようになった。
力の制御が出来れば、きっと仲間を守る力に変えれるだろうと・・・
秋斗は力の制御に取り組んだ。勿論、もし暴走した時の為に仲間達に見守られながら。
最初の内は暴走する事がしばしばあった。その度に、冬樹が秋斗を気絶させて (言い忘れていたが冬樹の腕力は不良を5人程吹っ飛ばせるくらいある) 暴走を収めていた。暴走は基本本人が死ぬか、気絶しないと収まらないからだ。
そんなこんなで、秋斗は力の制御を徐々に身につけた(と同時に体がかなり丈夫になった)。
そして去年の秋斗の誕生日頃、ついに秋斗は力の制御を取得した。
余談だが、最初のニーズヘッグ戦はこの2ヶ月前だった。
特徴としては、体全体が蒼い光に包まれる。そして瞳の色が蒼色になる。武装が蒼色の光を纏う。
そして体の中では、身体中の細胞一つ一つが活性化している (けして細胞分裂が活発化するわけではないが) 。
その為、身体能力が半端なく跳ね上がり、下手したら素手で魔物とやりあえる。
ただし弱点もある。一つは発動に時間がかかる事。
前話で秋斗があまり登場していなかったのは、解放準備をしていたからである。だいたい1分半程かかり、途中で集中を削がれる事があるとまた最初からやり直しだ。
もう一つは細胞活発化によるフィードバックだ。
これはまた後で話すとしよう。
あと一つ、この能力には特徴がある。
それは月光を浴びる事によって、彼が纏っている光が活性化する事だ。その為、この能力の真の力が出るのは晴れた夜という事になるだろう。
そして人々はいつ頃だったかは忘れたが、秋斗のこの状態をこう呼ぶようになった。
・・・「夜天ヲ駆ケシ蒼キ月光」と。
「ガアアァァ?!」
弾き飛ばされたニーズヘッグは、大きく後退しながらも体制を立て直した。
少なくとも、奴にとって個々まで、しかも片手で弾き飛ばされたのは初めてだろう。
「ガアァァァ!!」
今度は火球を秋斗に放った。
しかし秋斗はけして動かず、ただ盾を構えていた。
・・・いや、動かないのではなく、動けないのだが。
ドゴオォォォン!!
そのまま火球は秋斗を直撃し、爆発した。
普通ならこれで帰らぬ人だ。
しかし仲間はこの行く末を知っている為、全く同様しなかった。
煙が晴れた跡には・・・
光輝く盾を構えた秋斗が無傷で立っていた。
秋斗「誇り高き魂の鼓動は、絶対の名を持つ盾とならん・・・」
解放状態の特技、絶対防御。
盾に光を集中させ、極限まで防御力を高める事により、ありとあらゆる攻撃を無効化する。
弱点として、構えている間は動けない。
「ガアァァ!?」
仕留めたと思っていたニーズヘッグは当然驚いた。
そのスキを秋斗は見逃さなかった。
秋斗「うおおおおお!」
ニーズヘッグに急接近しながら再び手甲に光を集める。今度は防御ではないので動ける。
そして勢いのまま、ニーズヘッグの角を殴り、砕いた。
「ギャアァァ!??」
今まで傷一つ無かった二本角がいきなり砕け、ニーズヘッグは大きくふらついた。
流石にこいつには勝てないと思ったのだろう。
ニーズヘッグは体制を整えた後、火球を放った。
・・・里依紗達に向けて。
しかし彼はその火球に向け、光を集中させた剣を振った。
その瞬間、火球は真っ二つに別れ、秋斗の横で爆発した。爆風で彼の髪が揺らぐ。
爆風がおさまった刹那、秋斗はニーズヘッグに再び接近。
斬る。
斬る、斬る。
また斬る。
何回も斬った。あまりにも速過ぎて、蒼い残光が、まるで夜天の宙を駆け回るように動いていた。
何回かニーズヘッグが里依紗達に向け攻撃を試みるが、全て秋斗に防がれた。
そして遂に雌雄を決する時が来た。
秋斗「はあぁぁぁぁぁ!」
「グオォォォォァァ!」
秋斗の斬り上げと、龍の振り下ろしがぶつかり合った。
そして
「グ・・・ガァァォォ・・・」
龍は屈した。
秋斗「守りきれた・・・」
秋斗は静かに微笑んだ。
そして秋斗が纏っていた光は拡散し、瞳の色はいつもの黒色に戻り、そして、
秋斗は倒れ込んだ。
里依紗「お疲れ様」
それを里依紗が支えた。
秋斗が解放状態になり、戦っている間、冬樹と彩女が里依紗と浩二を救出。今はもう復活していた。
しかし今度は秋斗が倒れた。
これがフルバーストのもう一つの弱点、細胞活性化のフィードバックだ。
感じる疲労が倍になるのだ。
秋斗「ハァ・・・ハァ・・・」
実際、彼はさっきの里依紗達以上に息を乱していた。
冬樹「里依紗、そのまま連れていけるか?」
里依紗「うん、なんとか」
冬樹「では天高に戻るか。予定よりかなり遅くなってしまったな・・・」
こうして、彼らの今年度最初の狩りは無事成功を収めた。
秋斗「・・・ん・・・ここは?家?」
里依紗「あ、起きた?アッキー」
秋斗「里依紗?僕達外にいたんじゃ・・・」
里依紗「途中でアッキー寝ちゃったんだよ」
秋斗「あ・・・そう・・・」
里依紗「ねぇアッキー」
秋斗「ん?どうした?」
里依紗「ありがとね。あの時助けてくれて」
秋斗「お安い御用だよ。言ったでしょ?僕は騎士になって守る、て」
里依紗「ふふ・・・」
秋斗「あれ?なんか可笑しい事言った?」
里依紗「ううん。ただ、そういえば今日私が告白した時の夢見たな~、て」
秋斗「ああ・・・その時僕は騎士になる、て言ったんだよね・・・なれてるかな、皆が思うような騎士に」
里依紗「なってるよ。絶対。少なくとも私はそう思う」
秋斗「有難う」
二人は笑い合って、共に眠りについた。
この幸せな日常がいつまでも続きますよう、
皆を守ってみせる。
16歳の少年、決意の文
次回からは日常編。
皆様からいただいたゲストキャラが多数登場します!