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ガールズトークRPG  作者: 加茂正路
第四章.魔王襲来編
30/34

ⅩⅩⅩ.魔王!

 魔王が 現れた!


「朽ち果てるのは貴様の方だ、魔王! はああっ!!」

 いつものごとく先制で、いつも以上に気迫のこもった戦士が魔王に切り込む。はたして魔王の強さはどの程度なのか。


 戦士の 攻撃!

 魔王に 73のダメージ!


 さすがに三桁には至らなかったようだが、ちゃんとダメージが与えているようだ。よかったー、戦士の攻撃がノーダメージだったらどうしようかと思ったよ。これなら勝算がないわけではなさそうだ。

 わたしも銀の槍を構えると、戦士に続いた。ショーテルの時と同じく初めて装備するカテゴリの武器だけど、扱い方は体が知っている。

「てやっ!!」

 精霊王の動きをトレースするような攻撃モーションで槍を魔王の右肩に叩き込んだ。


 勇者の 攻撃!

 魔王に 42のダメージ!


 おっは! さすがは精霊王の槍だ。かなりの攻撃力がある。でないとわたしの純粋な力だけではこんな数値ははじき出せない。戦士にはまだ及ばないが、これなら十分戦力として数えられるようになったのでは? でもこれが最後の戦いなんだよね……。

猪口才(ちょこざい)な人間共が。貴様らがいかに醜い生き物か教えてやろう」

 禿げた鳥のような頭をしている輩にだけはそんなこと言われる謂れはない。

「我が魔力に屈するがいい。雷に抱かれろ! 《闇雷の豪爆魔法》!!」

 魔王の両の手に黒い雷が収束する。武器を所持していないところから見て魔法タイプと思ったけど、どうやらハズレではなかったようだ。


 魔王は 魔法を唱えた!

 地獄の雷が 勇者に襲い掛かる!


 同時に放たれた二つの雷球が両方ともわたし目掛けて飛んでくる。今のレベルでは一発でも当たればアウトだろう。ここは確実に回避しなければならない。だったら――、

「《雷の狂化魔法》!」

 精霊王戦で目覚めた勇者の力の一つ。相手は魔王、ここで出し惜しみをしている余裕などない。一気に片をつける。

「らああっ!」

 雷球を避けながら光速で魔王に詰め寄る。その速さに驚きの表情を隠せない魔王。さすがにこの素早さにはついて来られないらしい。

 精霊王をも追い込んだ力、とくと味わえ!


 勇者の 連続攻撃!

 魔王に 44のダメージ!

 クリティカルヒット!!

 魔王に 81のダメージ!

 魔王に 38のダメージ!

 魔王に 43のダメージ!


「ぐおぁっ」

 苦悶をあらわにする魔王。でかい図体は見たまんま俊敏性は皆無のようだ。回避はおろか微動だにできないでいる。

 わたしの連撃をくらって短い三本指を地につける。これはもしや楽勝だったか?

「これでトドメだ!!」


 勇者の 光速の一撃!

 クリティカルヒット!!

 魔王に 104のダメージ!


「はあ、はあ……。ど、どうだ!」

 慣れない魔法に加えて尋常ではありえない速度での運動だ。長い使用は体がもたない。でもかなりのダメージを与えたはずだ。いかに魔王といえども――。

「ふ……ふふふ……ふははははははははははっ!」

 !?

「こんなものか、勇者の力とやらは? ゴブリンの攻撃の方がまだ痛いぞ」

「そんな……、まったく効いていない?」

 それとも体力が桁違いに多いのだろうか。

「今度はこちらの番だ。魔王の力、とくと味わえ!」

 再び魔法の詠唱を行う魔王。まずい――。

「はたして今度は避けられるかな? 炎に抱かれろ! 《黒炎の豪烈魔法》!!」

「「「!?」」」

 視界が――謁見の間が暗黒に染まる。業火を孕んだ突風が逃げ場なく吹き荒れた。


 魔王は 魔法を唱えた!

 地獄の焔風が 勇者達に襲い掛かる!

 勇者は 184のダメージを受けた!

 勇者は 戦闘不能に陥った!

 戦士は 224のダメージを受けた!

 戦士は 戦闘不能に陥った!

 僧侶は 26のダメージを受けた!


「ぐわっ」「っが」「きゃっ」

 炎の剣で切り刻まれたような衝撃が全身を(さいな)む。何という威力だ、たった一撃で全滅寸前に追い込まれてしまった。

「ははははははっ。弱い、弱過ぎる。精霊の力がない勇者など只の町人同然だな!」

 精霊王以上の圧倒的な力の差を痛感する。根性や起死回生の一撃だけでどうにかなる敵ではない。このまま力及ばずやられるだけなのか。

「安心しろ、手は抜かんぞ。この目でしかと貴様が死ぬのを見届けるまではな!」

 魔王の体から暗黒の波動が放出される。や、やばい……体が動かない。

「そんなチンケな魔法でよく威張れるじゃない」

 ? 走馬灯が見える直前で聞き慣れた声が背後から発せられた。

「何だと? 誰だ」

「いつまでそこで寝てるのよ。さっさと起きなさい」

 足でわたしの背中を踏むのはマホツカか。いや、ほんと動けないんだって。

「ほう、まだ仲間がいたのか」

「まったく、ワタシがいないと何もできないんだから」

 面目ありません。でもいきなり魔王が相手なんて無理に決まってる。

「くはははっ、今更魔法使い一人増えたところで何が出来る!」

 謁見の間を包んでいた熱が冷め、絶対零度の場が生まれる。

「共に貫かれるがいい! 《氷閻の豪槍魔法》!!」

 黒い氷粒(ひょうりゅう)が集まり、巨大な槍が魔王の頭上に生成される。その矛先は狂いなくわたしへと狙い定められていた。

「はぁ……。雑魚い魔法ね。魔王って言うから少しは期待してたのに。これじゃちっとも楽しめそうにないじゃない」

 一見挑発にも捉えられる言葉だが、マホツカは心底残念そうな様子だった。

「聞き捨てならんな、人間風情が。ならばこれを防いでみるがいい!」

 マホツカの言葉に反応してか、氷の槍がさらに大きさを増していく。どうやら魔王もただの負けず嫌いのようだった。意外と人間味がある。

「ふん、魔法ってのはこうやって使うのよ。

 …………火竜の顎門(あぎと)よ、ハゲドリ頭の魔王を焼き鳥にしなさい!」

 対するマホツカも詠唱を開始する。魔王とは反対にこちらは炎の属性のようだ。相も変わらず変な文言だけど、魔王以上の力を感じる。

「我が魔力を最大まで込めた一撃だ! 己の愚かさを悔やみながら死ぬのだな!」

 騎槍のように鋭く尖った氷柱が撃ち出された。

「それはこっちの台詞よ。喰らい尽くせ! 《イグニ・バイト》!!」

 口を模すかのように上下に合わせた両手から、光と熱の塊が放出される。

 両者の強力な魔法攻撃。それが互いからの中央で激しく衝突し――なかった。

「な、何だと!?」

 炎の竜頭は氷の槍を噛み砕くと、次の獲物を求めて一層口を大きく開いた。

「消えるのはアンタよ!」

「そんな……そんなバカなー――」

 魔王を一口で飲み込んだ炎はそのまま城の壁をぶち抜いて天へと昇る。そして花火となってシンヨークの空で汚く弾け散った。


 マホツカは 魔法を唱えた!

 魔王に 1101のダメージ!

 魔王を 倒した!


 焼き鳥どころか消し炭の一片すら残さず消滅していった魔王。

 か、勝ったの?

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