↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

野井琅世のエッセイまとめ

中学生の時、教室で発生した異臭騒ぎの話

作者: 野井琅世
掲載日:2026/10/16

決して綺麗な話ではないのでご注意ください。



 とうとう、この話をする時が来てしまいました。

 今日、私は、一つの告白をしたいと思います。

 今まで語る事の出来なかった、ある出来事について。

 ずっと口を噤(つぐ)んでいましたが、もう良いだろうと思い、ここで吐き出す事にします。

 一種の懺悔(ざんげ)とも言えます。

 そんな内容ですが、どうか、最後まで御付き合いください。




 あれは、私が中学生だった時の話です。

 初老のオッサンが中学生の頃。

 これを読む、若い人は生まれてもいないかもしれません。

 そんな昔の話。


 その日、学校で、掃除も終わり、後は帰りのホームルームを待つだけとなりました。

 クラスメイトは、皆、思い思いに談笑していたのです。

 私も、既に顔すらも忘れてしまった友人と談笑していたのを覚えています。

 そんな時でした。


 何処からともなく、異常なまでの異臭が漂ってきたのです。


 ミカンが腐った様な、何処か柑橘系を思わせる、刺激臭をともなった悪臭でした。

 その悪臭は、何処から発生したのか分かりませんでしたが、次第に教室中に広がって行きました。


 教室が騒然となりました。


 今の若い人にはピンとこないかもしれませんが、時代が時代です。

 その時は、地下鉄で毒ガスが撒かれた事件から、そう何年も経っていない頃。

 皆、そういった物に敏感になっていた時代なのです。

 だからこそ、教室は軽いパニックになりました。


「何だ⁉ この匂い⁉」


「臭い!」


「凄い匂いだ!」


 そんな声が聞こえてきました。

 私と談笑していた友人も匂いに気づき、匂いの元を探す様に視線を彷徨(さまよ)わせていました。

 しかし、匂いの元は、誰も突き止める事が出来ませんでした。

 誰かが開けた窓から匂いは抜けていったのです。

 先程までの悪臭が嘘の様に匂いは消え失せました。

 つまり、それは、少なくとも、悪臭の元が教室に残されている訳ではないという事です。

 皆、その事に気づいたのでしょう。

 教室は、急速に冷静さを取り戻しました。

 パニック寸前だったとは思えない程、簡単に騒ぎは収まったのです。

 私は、正直な話、騒ぎが収まった事にホッとしていました。

 大事にならなかった事を神に感謝したほどです。


 何故なら、私は、悪臭の原因が何処にあるのか知っていたのです。


 知っていながら、とても口に出せませんでした。

 それを口に出す事は、一人の人間の尊厳を踏みにじる事になるからです。


 でも、もう良いでしょう。


 何十年も経ちました。

 皆、あの出来事を忘れているでしょう。

 だから、ここで吐き出させてください。

 もし、何かの奇跡で、あの事件を覚えている当時のクラスメイトがここに辿り着いたら、苦笑いでも浮かべて忘れてください。



 ………………



 ……では、行きます。



 あの異臭騒ぎ……。

 あの異臭騒ぎの原因は……。



 あれは……








 あれは、俺の屁(へ)だ。



顔も名前も覚えていない当時の友人よ。

私が、「誰か屁でもしたんじゃないか?」と、言ったら。

貴方は、「これは、そんな生易しい物じゃない!」と、言ってくれましたね。

顔も名前も忘れても、あの恨みだけは忘れませんw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。