いじめ捜査官
『人をいじめるようなやつに、未来なんかあってたまるか』
『いじめは犯罪だ!さっさと捕まえろ!』
そんな国民たちの声を聞き入れ導入された、いじめ捜査官。
彼らは、世の中のいじめを取り締まる正義のヒーローだ。
そして、そんな正義のヒーローのうちの一人、私、畠山清次郎は、今日もまた、巡回に勤しむ。
巡回中、一般生徒からのタレコミがあった。
曰く、
「三組の陽太くんが、加賀くんにいじめられてる」
らしい。
基本的に、我々は令状を受けなければ動くことができない、しかし、現行犯であれば、即刻、護送することが可能である。
なので、早速三組に小型のカメラ、聴音機を設置、給食のあまりのコッペパンと牛乳で、第三会議室のモニター前に張り込む。
ほとんど待つことなく、すぐだった。
「陽太のバーカ!」
加賀くんは陽太くんを罵倒し、丸めた紙を投げつけた。
周りの者たちも、何も言わず、黙って机に向かっている。
これは、現行犯である。
第三会議室から急ぎでて、三組のドアを開ける。
「いじめ捜査官、畠山清次郎である!加賀くん、君を護送対象とする!」
一瞬、クラスが静寂に包まれる。
初めに音を出したのは、加賀くんの小さな弱々しい声であった。
泣いても無駄だ、加賀くん。
君は行くべきところにいかなければならない。
私は山を下って、加賀くんを送るべき場所に送り届けてから、また巡回を始めた。
うむ、どこにも異常なしだ。
第三会議室に戻ってくると、モニターが付けられたままになっているのに気づいた。
後で誤っておかねば。
おや?
これは、陽太くんかな?
「加賀のやつ、ほんとに連れてかれたなぁ!捜査官のやつもバカだよなぁ!」
思わず、口角が上がってしまう。
この性格は直さなければならないとも思う。
しかし同時に、こうも思うのだ。
やはり、いじめ捜査官、もとい、この『こども隔離監獄』の看守である私、畠山清次郎は、正義のヒーローである。
と。




