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凡人冒険者カゲルの日常系ダンジョン冒険日記 〜通りすがりのスゴイ人たち〜  作者: 二天堂 昔


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2/5

第2話 『俺の尾行スキルを舐めるなよ問題』



迷宮・第一層。

――ヒュゥ……。

冷たい風が石壁をすり抜け、

湿った苔の匂いが鼻の奥に張りつく。


足音が**コツ……コツ……コツ……と反響する。

俺のじゃない。

前を歩く三人の足音だ。

俺は離れすぎず、近すぎず――

絶妙な距離を保ちながら尾行する。


(……俺の尾行スキルを舐めるなよ……)


ただの好奇心じゃない。

冒険者としての危機感だけでもない。

――あの三人の背中を見た瞬間、

胸の奥で何かが“掴まれた”。

理由はわからない。

だが確かに、俺は“選んだ”。

追う、という選択を。

柱の影で息を小さく吐く。

ス……ッ。

そして耳を澄ませる。


◆ 盗み聞き――会話

料理人らしき男:「……迷宮が荒れてやがる。魔物の動き、昨日までとは違うな。」

ゴッと地面が微かに揺れる。

遠くで魔物同士の咆哮のような音が響く。


(迷宮が“荒れる”?どういう意味だ……?)

エルフ娘:「風も重いわ。……第二層、いや――もっと奥から来てる。」

ヒュォォ……風が足元を撫でる。

その風ですら、妙にざらついていた。

(“奥”ってなんだ……二層の先にもまだ脅威が続いてるってこと?)


裸足の剣豪:「……芯が揺らいでおるな。あれは修復ではないと見る。」

低い声が空気を震わせる。

(うん、意味わからん……なのに……妙に納得してる自分が怖い。)


三人の声は落ち着いていた。

だがその言葉の奥には、

俺が知らない景色を越えてきた者だけの静かな重さがあった。


◆ 魔物の気配

前方からズズ……ズチュ……と湿った音。

スライム5匹、ゴブリン2匹。

不快な音を立てながら現れる。


俺の喉がゴクリと鳴った。

(戦闘だ……!)

だが三人は止まらなかった。

むしろ――歩幅も呼吸も変わらない。

次の瞬間。


シュッ

パキンッ

スッ……!

ドサッ、ドサッ、ドサッ……。


魔物たちは崩れ落ち、

最後にスライムがぷしゅう……と溶けて消えた。


俺は瞬きを忘れて立ち尽くす。

(……なんだ今の……?

動きが……見えなかった……)

剣も魔法も、残像すらなかった。

ただ――

“結果だけが残った”。

迷宮の空気すら、

三人の通り道を避けているように見えた。


◆ 名前が判明

エルフ娘:「……武蔵。第二層も行くでしょ?」

武蔵(裸足の剣豪):「うむ。」

料理人らしき男:「どうせ行くなら奥までだな。フィリーネ、準備はいいか?」

フィリーネ(エルフ娘):「誰に言ってるのよ、にすけ。こんなの準備運動にもならないわよ。」


三人の名前――

武蔵。

フィリーネ。

にすけ。


短いのに、音が胸に残る。

(名前を知ったのに……距離が縮まらない。

それどころか――遠く感じるのはなぜなんだろう。)


◆ 第二層――境界

数分後、上に上る階段が現れた。

第一層より黒く魔素がもわっ……と染み出している。

三人は1ミリも迷わず上り始める。


俺の胸がドクッ……ドクッ……と跳ねる。

不安感、恐怖心、いや、これは――本能の警告だ。

(行くべきじゃない……今ならまだ引き返せる。でも……引き返したくない……)


大きく息を吸う。

スゥーーーー……

……ハッ。

階段を一段上がるたび、空気が重く、濃くなっていく。

迷宮第二層が近い。

そして――

俺はようやく理解する。


(……あぁ。

俺の尾行スキルを舐めるなよ、なんて思ってたけどそれどころじゃない。

問題なのは、

――生き残る事を目標にしてた俺が、いまは命懸けの追跡をしてるって事だ。


まったく、俺の平凡な日常、どこ行っちまったんだよ。)


つづく


================

◆ あとがき ◆

作者:二天堂 昔より


第2話をお読みいただいた皆さま、誠にありがとうございます。


カゲルの“尾行スキル”は、本人が思っている以上に

この物語の核心へと近づく鍵になっています。

ただの凡人シーフが、なぜか強者三人の背中に

吸い寄せられていく理由は、今後ゆっくり明らかに——

…なる前にもっと巻き込まれます。ご安心ください。


ちなみに今回の尾行シーン、

文章と漫画では印象がちょっと違う部分でもあります。

迷宮の暗さ、三人の気配の異様さ、

カゲルの慌てっぷりなどは、

漫画版だとより“生きた空気”として見えるように描いているつもりです。


もし興味があれば、Kindleインディーズ漫画にて

『凡人冒険者カゲルの日常系ダンジョン冒険日記』

と検索していただくと、漫画版(無料)が読めます。


小説は“内心と違和感の深堀り”、

漫画は“迷宮の臨場感とカゲルの顔芸”と、

それぞれ違った楽しみ方ができるかと思います。


次回、第3話では迷宮第二層へ。

カゲルの胃痛はさらに加速していきますのでお楽しみに。

                 二天堂 昔

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