協力
――王都・食堂。
三人は木の椅子に腰を下ろし、温かな煮込み料理の香りに包まれていた。
パンをちぎりながら、真時はクレアの青白い肌と銀の髪に目を向ける。北国の風を思わせるその容姿は、美しいだけでなく、どこか自然体で話しやすい雰囲気を持っていた。
「……兄さんは、何を食べるんです?」
クレアが笑顔でラケイシに尋ねる。
「肉だな」
ラケイシは低く短く答え、スープを口に運ぶ。
三人が料理を口に運び、会話を楽しみ始めたそのとき――。
クレアの肩がわずかに震え、手元のカップが少し揺れた。
「……あっ」
クレアは慌てて手を添えるが、すぐに落ち着く。
真時は少し気になった程度で、眉をひそめる。
(……今、ちょっと手が震えたか? いや、気のせいか)
ラケイシは短く告げる。
「大丈夫か、クレア?」
クレアは微かに頷き、恥ずかしそうに微笑む。
「ええ、大丈夫です。ただ……ちょっと、慣れない場所だから緊張してしまって」
真時は安心したように笑い、パンをちぎった。
「なるほど、王都は初めてか。賑やかだもんな」
ラケイシが静かに補足する。
「いや、実は来た目的は観光ではない。妹の魔力の乱れを整える方法を探すためだ」
真時は目を丸くする。
「魔力の乱れ……?」
クレアが少し顔を赤らめながら答える。
「生まれつき、魔力の流れが安定しないんです。普段は問題ないのですが、時々、暴走しそうになることがあって……北国では薬草で抑えていました」
「……だから王都に?」
真時はうなずきながら理解する。
「王都は広いからな。俺も慣れてる訳じゃないが、仲間たちが休養に入って、ちょうど1か月休みだから、手伝える」
クレアの瞳がぱっと明るくなり、嬉しそうに笑った。
「本当ですか! ありがとうございます!」
ラケイシも短く頷く。
「無理をさせるな。だが、助けてもらえるなら心強い」
――こうして、食事を終えた三人は、魔力を整える術を記した魔法書を探すため、王都での探索を始めることになった。




