選択
――魔獣の圧倒的な力を目の当たりにし、四人は互いの呼吸を確かめる。
レオンは盾で一撃を受け止め、バルドの大剣も全く通じない。
ユリクの矢は小さく当たるだけで、硬い鱗を突き破れない。
真時は剣を握り直し、歯を噛む。
(……これ……正面からじゃ勝てない……)
視線が腰つけている袋に落ちる。
あの力を使えば、ここで勝負はつくかもしれない。
だが、代償は――
心臓が激しく打つ。
魔獣の唸りが耳に響き、前に立つ仲間たちの息遣いが胸に刺さる。
「……スキルを使えば……」
だがその思考と同時に、恐怖が襲う。
(……でも、代償は……俺一人で耐えられるか?……)
バルドが大剣を振り上げ、魔獣の注意を引く。
レオンも盾を構え直し、ユリクは矢を番えている。
その瞬間、真時は迷いと覚悟の狭間で立ち尽くす。
(……どうする、真時……使うか、それとも……)
坑道の奥、紫色の石の光がわずかに揺れる中、真時の心の中の天秤は静かに揺れていた。
勝つためにはスキルを使うしかない――
だが、それを選ぶ勇気と覚悟は、まだ胸に重くのしかかっている。




