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スキルの特殊性
坂田のスキルは、世間一般の魔法や剣技とは少し違っていた。魔法なら炎や氷、剣技なら筋力と技術が試される。しかしこの能力は――まるで世界の仕組みに小さな穴を開けるかのように、時間や運命の“スロット”を操作する力だった。
対価を差し込み、スキルを発動すると、周囲の世界は一瞬止まる。坂田だけが動き、見えないリールなどが頭の中で回転する。狙いを定めて小役を揃えると、現実に光の玉や影響が現れ、意図した結果を生み出すことができる。
普通の戦士や魔法使いには理解できない――いや、理解はできても再現はできない――まるで“確率と現実を同時に操作する不思議な力”。だが坂田にとっては、金を生むだけの便利道具ではなく、命を守る護身具であり、状況を有利に動かすための計算道具でもあった。
路地裏での一件のように、相手の強さや数に関わらず、スキルを使えば最小限の代償で最大の効果を引き出せる――それが、この世界で唯一無二の、坂田のスキルの真価だった。




