表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ギャブル勇者〜確率を超えて〰️  作者: 海木雷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

67/179

激闘.2

――真時の手の中で、ライムを変換したメダルが淡く光を放つ。


「……行くぞ」

決意を込め、真時はスキルを発動させた。


――《スロット起動》


目の前にスロット台が現れる。

時間が凍り付き、すべての音が消える。

ただ、真時の胸の鼓動だけが響いていた。


(……ライム。力を貸してくれ)


カチリ、とレバーを叩く。

リールが回転し、緊張が張り詰める。

真時は強い意志でボタンを押す。


【ライム】【ライム】【ライム】


三つの図柄が一直線に揃った瞬間、眩い閃光が炸裂した。


「っ……!」


時間が再び動き出す。

その中央に――ライムの霊が立っていた。

生前と同じ装備を纏い、その姿は光をまとった戦士そのものだった。


「....行くぞ..」


ライムの霊は剣を振り抜いた。

刃は光を帯び、一直線に巨大カマキリへと叩き込まれる。


――轟音。


カマキリの硬い外殻が砕け、黒い体液が飛び散る。

強力な一撃により、巨体がよろめいた。


「今だ、畳みかけろ!」

レオンが声を張り上げる。


「うおおおっ!」

バルドが大剣を叩きつけ、ユリクが矢を連射。

《銀の牙》の仲間も、驚きながら、しかし怒りと悲しみを力に変えて剣を振るう。


真時も恐怖を押し殺し、体中の痛みに耐え剣を振るう。


連携した総攻撃が次々と弱ったカマキリを貫き――

最後はライムの霊が追撃の一閃を放つ。


「おおおおッ!」


光の剣が巨体を斬り裂き、轟音と共に鉱道へと崩れ落ちた。

ボス級魔獣の体が動かなくなると同時に、ライムの霊は静かに仲間を振り返り――微笑んだ。


「……任せたぞ」


そう言い残し、霊は光となって消えていった。


――静寂。


仲間たちはその場に立ち尽くし、深い息を吐いた。

勝利の実感よりも、ライムを失った痛みの方が胸を占めていた。



ボス級魔獣が絶命した鉱道に、重苦しい沈黙が広がっていた。


血と体液の臭いが漂う中、両パーティの面々は肩で息をしながら剣を下ろす。

勝利したはずなのに、誰一人として喜びの声をあげる者はいなかった。


「ライム……」

《銀の牙》の仲間が、地に残された血痕の前に膝をつき、声を押し殺す。

涙が土に染み込み、坑道の冷えた空気に嗚咽が響いた。


真時もその光景を前に、拳を強く握り締めていた。

(……俺は、ライムを“変換”した。あの一撃は確かにライムの力だった。けど……)

胸に重く、言葉にならない感情が渦巻く。


やがて、《銀の牙》の一人が顔を上げた。

「……お前……さっきのは何だ? ライムの……霊が出て……」


仲間たちも揺れる視線を真時に向ける。

口を開きかけたその時――


「待ってくれ」

低く、だがはっきりとした声が割り込んだ。


レオンだった。

彼は険しい表情で《銀の牙》の仲間を見据える。

「今は、何も言わないでほしい。……真時の力については、まだ話すべきじゃない」


その言葉に空気が張り詰める。

しかし、ライムを失った仲間たちは、しばしの沈黙ののち、静かに頷いた。


「……わかった。ライムも……お前らに託したんだろう」

「口外はしない。ただ……あいつの力が無駄じゃなかったと、忘れないでくれ」


レオンは深く頷き返す。

「約束する」


真時は俯いたまま、仲間たちのやり取りを聞いていた。

罪悪感と感謝が入り混じり、胸の奥が痛む。


(……ライム。お前の力、必ず意味のあるものにしてみせる)


――戦いの後の静寂は、勝利の余韻ではなく、大切な仲間を失った痛みだけを残していた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ