スキルを知る
次に坂田は、質屋の近くの小さな店で護身用のナイフを購入した。銀貨3枚を差し出すと、手に馴染む重みが背筋を伸ばす。これで路地裏の危険にも少しは対処できる。残った銀貨11枚をポケットにしまい、再び路地を歩き始めた。
しかし、その安心は長くは続かなかった。路地の奥から背の高い男たちが近づき、鋭い視線を向けてくる。
「おい、そこの若えの……その銀貨、ちょっと見せてもらおうか」
坂田は瞬時に判断する。無理に抵抗すれば命の危険もある。手にはナイフがあるが、無闇に振りかざすわけにはいかない。
やばい
「……ス、スキル、何とかするしかない」
スキル発動【スロット】!!
慎重に目の前の台に銀貨1枚を差し込む。指先に力を込め、世界を止める感覚を呼び覚ます。再び路地の時間が凍り、坂田だけが動ける状態になった。
リールが光を帯びて回転する。坂田は深呼吸し、狙いを定めて小役を揃える――瞬間的に光の玉が弾け、狙ったごろつきの頭部に向かって飛ぶ。
小役が見事に揃い、ごろつきたちは意識を失い、ゆっくりと膝をつく。坂田は世界が再び動き出す前にナイフを握り、警戒しながら後ずさる。
「……なるほど、スキルは状況に応じて使えるんだな」
今回の成功で坂田は気づいた。スキルは、金を生むだけではなく、相手を制圧したり危険を回避したりするためにも応用できる――状況を読み、最小限の代償で最大の効果を出すことが可能だと。
息を整え、残った銀貨を確かめる坂田。手元の通貨は増えていないが、命を守り、危機を回避できたことが何よりの成果だった。
「……よし、これで次に備えられる」
路地裏の薄暗い空気の中、坂田は慎重に歩きながら、次の行動を思案する。スキルの使い方を学んだ今、以前よりも冷静に、計算して動ける自信が芽生えていた。




