立ち回り
坂田真時は路地裏の古びた質屋で、今着ている服を差し出した。
親父はじっと服を見てうなずき、銀貨12枚を手渡す。
「……これで、なんとか立て直せるか」
だが、裸で歩くわけにはいかない。
質屋の片隅には、この世界での一般的な質素な上下服が並んでいた。
少し手触りは粗いが、着るには十分だ。
坂田は銀貨2枚を差し出し、上下服を購入する。
袖を通すと、体が軽く感じられ、少しだけ安心する。
残った銀貨10枚は、生活費やスキルで稼ぐ資金として残すことにした。
そして、路地裏で坂田は慎重に銀貨2枚を握る。
スキル《パチンコ》を発動する――代償を恐れながらも、生活資金を増やすために使うしかない。
「……代償に気をつけろ……でも、やるしかない」
目の前のパチンコ台の投入口に銀貨2枚をそっと入れる。
台には玉数500個と表示がされる
指先が震え、心臓が早鐘のように打つ。
深呼吸をして、ハンドルを回す。
世界が止まる。
通りの人々も、屋台の湯気も、石畳のざらつきも静止する。
坂田だけが自由に動ける。
「頼む,頼む」
玉が吸い込まれていく。
残り100玉を切ったあたりだった。
リールが光の中で回り、瞬間――単発大当たり。
ジャラリ……1500発のパチンコ玉が払い出される。
手の中に冷たい金属の重みがずっしりと伝わる。
しかし胸の奥には、生命力と精神力を削られる鈍い痛みが走る。
額に汗が浮かび、心臓が張り裂けそうな感覚。
「……うおお……!」
スキルの代償に恐れながらも得た勝利。
世界が再び動き出すと、手の中のパチンコ玉は光を帯び、静かに変化する――
ジャラリ……銀貨6枚。
「……なるほど、これがスキルの成果か」
1500発の玉は、スキルの力によって確実に生活通貨として確定した。
恐怖と代償を乗り越えた先に得られた小さな勝利。
坂田真時は手にした銀貨を握りしめ、路地裏で息を整える。
「よし……これで少しは生活を立て直せる。次はもっと計画的に動くぞ」




