真時の賭け
仲間たちが再度、祠へ行く準備をしている中、
真時は一人、外へ出た。
月明かりに照らされる林を遠くに眺め、腰の袋から金貨を取り出す。
(……もし俺の仮説が正しければ、スキルで“今の祠”じゃなく“昔の祠”を探ることができるはずだ。だが……代償はどうなる……?)
指先で金貨を弄びながら、真時は深く息を吸った。
「……一枚じゃ足りない。きっと――」
脳裏に、あの時の冷たい声が蘇る。
『メダルが足りません』
真時は苦い笑みを浮かべた。
「危機を打開するには、それに見合った代償……。じゃあ、過去を覗くなんて芸当には、いくら必要なんだ……」
考えた末に、袋から残りわずかな金貨を3枚取り出し、地面に並べた。
これを使ったら、残りは3枚か。
(……これで足りなければ、今はまだ俺に扱う資格がないってことだ)
震える手で、スキルを発動させる。
「スキル――スロット、起動」
時が止まる。
目の前に現れたスロット台リールが白く輝き、これまでと違う重々しい音を響かせた。
「カララララ……!」
真時の頭の奥を、激しい痛みが走り抜ける。
「ぐっ……!」
膝をつく真時の耳に、リールの回転音と同時に、今までにはない、低く冷たい声が響く。
『代償、三枚確認。――抽選開始』
リールを止める。
――揃ったのは、見慣れぬシンボル。古びた祠と、子どもたちの笑顔を象った絵柄だった。
「これは……!」
視界が一瞬、白に塗り潰され――。
次に見たのは、遠い昔の光景。
祠の周りで笑い合う子どもたち、無邪気に遊び歌う声、そして……穏やかな気配を纏った祠そのもの。
(これが……昔の祠……!)
だが同時に、真時の胸を突き刺すような痛みが走り、呼吸が荒くなる。
「はぁ……っ、くそ……っ!」
――視界が揺れながらも、真時は確かに見た。
祠の扉の奥に、光を放つ存在が“村人たちの声”に反応して微笑む姿を。
(……やっぱり……! 神は“封じられて”いたんじゃない……。村と共に“在った”んだ……! それを忘れられたから……怪物に……!)
視界が暗転し、真時はその場に倒れ込んだ――。




