激闘.2
――怪物が牙を剥き、突進の気配を見せたその瞬間。
真時は震える手で腰袋から金貨を一枚つかみ取った。
「……もう、やるしかない……!」
仲間たちの視線が一斉に集まる。
「真時!? 今ここで使うのか!」
レオンの声が緊迫する。
バルドが吠えた。
「無理すんな! まだ立つのもやっとだろ!」
だが真時は返事をせず、金貨を掌に載せた。
――スキル:スロット。
時間が凍りつき、祠の前にスロット台が現れる。
リールが赤い粒子を散らしながら回転し、真時は深く息を吸ってボタンを押した。
――しかし。
目の前に、冷たい光の文字が浮かび上がる。
《メダルが不足しています》
「……っ!?」
真時は愕然とする。
回転するリールは空虚なまま消え、スロット台も淡く揺らめきながら霧のように消滅していった。
「な、なんだよ……! 金貨一枚じゃ……足りないのか……!?」
胸の痛みだけが強く残り、視界がぐらつく。
時間が動き出すと同時に、怪物の咆哮が耳をつんざいた。
ユリクが叫ぶ。
「真時!? 何が起きた!?」
レオンが鋭く指示を飛ばす。
「考えるのは後だ! 今は生き残れ!」
バルドが盾代わりに剣を構え、怪物に立ち向かう。
「くそっ、スキルが使えねぇってのかよ! だったら俺が時間稼ぐしかねぇ!」
真時は膝をつきながら歯を食いしばる。
(……まさか、金貨じゃなく、もっと大きな代償が必要だっていうのか……!?)
――怪物の巨体が迫る。
仲間たちが必死に抗う中、真時は新たな選択を迫られていた。




