激闘
赤い光を纏った怪物が突進してきた。
地響きのような音と共に、巨体が迫る。
バルドが真っ先に動き、剣を振り下ろしながら叫んだ。
「おらぁっ! 来やがれ!」
だが怪物の前脚が弾丸のように振り抜かれ、バルドの剣ごと弾き飛ばす。
「ぐっ……硬ぇ!」
すかさずレオンが盾を前に踏み込み、怪物の体当たりを受け止めた。
「下がれバルド! 無茶するな!」
バルドは体勢を立て直しつつ、にやりと笑う。
「へっ、まだいける!」
その間にユリクの矢が唸りを上げて飛ぶ。
矢は怪物の赤い目をかすめ、黒い毛並みに突き刺さった。
「くそっ……皮膚が厚い! 狙いを変える!」
真時は息を整え、仲間の様子を見ながら声を上げる。
「ユリク! 目じゃなくて、足を狙え! 動きを止めればチャンスが作れる!」
ユリクが頷き、すぐに狙いを下へ移す。
「了解!」
バルドが剣を構え直し、レオンに肩をぶつけて言った。
「おい!次は二人で同時にいくぞ!」
レオンが短く返す。
「合わせろ。タイミングを間違えるなよ!」
真時は歯を食いしばり、胸の奥の痛みに耐えながら仲間を見つめた。
(……俺も動かなきゃ。だが、今はまだ……!)
怪物が唸り声をあげ、再び突進の構えを取る。
赤い光が地面を焼くように走った。
仲間たちは互いに掛け声を交わし、次の瞬間に備える。
怪物が再び突進してきた。
レオンとバルドが同時に踏み込み、盾と剣で受け止める。
だが、凄まじい衝撃に二人の足が地面を削り、後方へと押しやられた。
「ぐっ……重いっ!」
レオンが盾越しに呻き声を上げる。
バルドも歯を食いしばりながら叫ぶ。
「ちっ……力比べじゃ勝てねぇ!」
その隙に、怪物の尾のように伸びた黒い触手が背後へしなり、真時へ襲いかかった。
「っ――!」
咄嗟に身を翻すも、脇腹をかすめられ、体が横へ弾き飛ばされる。
地面を転がり、土埃を舞い上げながら必死に立ち上がる。
「……っ、くそ……!」
ユリクが慌てて矢を連射するが、硬い毛並みに弾かれ、怪物の動きを止められない。
「効かない……! どうすれば……!」
怪物の赤い目が光り、口から黒い瘴気のような息を吐き出す。
それが地面を這うと、草が一瞬で枯れ、石が黒ずんでいった。
レオンが声を張り上げる。
「毒か!? 下がれ、踏み込むな!」
バルドは悔しげに唸る。
「クソッ、攻められねぇ! このままじゃ押し潰されるぞ!」
真時は肩で息をしながら仲間を見た。胸の痛みはさらに強まり、視界が揺れる。
(……このままじゃ……やられる……! でも、またスキルを使えば……俺は……)
ユリクが必死に叫ぶ。
「真時! 立てるか!?」
赤い光を纏った怪物が、牙をむき出しにして再び突進の構えを取った。
四人は完全に追い詰められようとしていた――




