表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ギャブル勇者〜確率を超えて〰️  作者: 海木雷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/179

タリス村.外れ

――タリス村の外れ。


赤い光が導いた先は、村から少し離れた林の中だった。


木々の間は昼でも薄暗く、湿った空気が肌にまとわりつく。鳥の鳴き声も途絶え、不気味な静けさが辺りを支配していた。


真時は額の汗をぬぐいながら歩を進める。胸の奥にまだ鈍い痛みが残っていたが、足取りを止めるわけにはいかない。


ユリクが弓を構え、低い声で言う。

「……気配が濃いな。何かがいる」


レオンは盾を持ち直し、警戒の目を周囲に巡らせる。

「真時、光はどのあたりだ?」


真時は目を細め、残像のように視界に映る赤い光を追う。

「……この先だ。古い祠みたいな……建物がある」


進むにつれて、確かに苔むした石造りの祠が木々の間に姿を現した。扉は外れ、黒い穴のように口を開けている。その隙間から、赤い光が脈打つように漏れ出していた。


バルドが眉をひそめ、唸る。

「こいつは……ただの光じゃねぇな。禍々しい気配がする」


ユリクが小声で言う。

「何かの封印……それとも、魔獣を呼び寄せているのか」


レオンは一同を見回し、静かに告げる。

「不用意に近づけば危険だ。だが、村を守るには原因を突き止めるしかない」


真時は胸に残る痛みに耐えながら、祠をじっと見据える。

(……スキルで見えた光は、ここから出ている。間違いない……)


彼の決意に呼応するように、仲間たちも武器を握り直した。


その瞬間、祠の奥から低い唸り声が響いた。

地面が微かに震え、赤い光が一層強く脈打つ。


バルドが息を呑む。

「来るぞ……!」


四人は緊張を高め、祠の闇の奥に目を凝らした。


闇の中から、ずるり、と重たい音が響いた。石を引きずるような、肉が擦れるような、不快な音。


やがて赤い光に照らされ、影がゆらりと揺れる。


ユリクが矢を番えながら囁いた。

「……人の形……か? いや、違う……」


レオンが低く答える。

「魔獣でも人でもない……何かが歪んでいる」


祠の闇から姿を現したのは、黒い毛並みに覆われた巨体だった。四足だが背は人間のように湾曲し、頭部にはねじれた角が突き出している。目はぎらつく赤で、口からは涎と腐臭を放っていた。


バルドが歯を食いしばる。

「うわ……こいつ、ただの獣じゃねぇ! 腐った魔力をまとってやがる」


真時の胸に再び鋭い痛みが走った。先ほどのスキルで見た光と、この怪物から放たれる赤が重なって見える。

「……間違いない、こいつが光の原因だ……!」


怪物は低く唸り声を上げると、祠の石柱を爪で引き裂いた。石片が飛び散り、地面に赤い火花のようなものが散る。


レオンが盾を構え、仲間に指示を飛ばす。

「バルドは俺と前衛を! ユリクは援護を頼む! 真時は……無理をするな、状況を見極めて動け!」


バルドが剣を構え、にやりと笑う。

「おう!腕が鳴るぜ!」


ユリクは弦を引き絞り、目を細めた。

「……狙うは心臓か、目か。弱点を見つける」


真時は息を整え、手のひらを握り締める。

(スキルを使うか……いや、もう少し状況を見てからだ。こいつがどんな動きをするか……!)


――赤い光に包まれた怪物が、轟音を立てて四人へ突進してきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ