初めての博打
スープで腹を満たした坂田真時は、残りの銅貨5枚を手に路地を歩いていた。
屋台の周りでは、子供や町人たちが小さな台でコインの裏表を当てるギャンブルを楽しんでいる。
「……あれなら、ちょっと増やせるかも」
軽い気持ちで手が動く。
スキルを使えば安全に稼げることはわかっていた。
だが、スキル発動の代償が怖い。
「……ここは、運に任せるしかないか」
坂田真時は、残りの銅貨5枚を台の上に置いた。
「裏だ!」
コインが投げられ、空中でくるくる回る。
周囲の人々はいつも通りで、歓声やざわめきが静かに響く。
そして落ちたのは――表。
「……はあっ!?」
銅貨5枚はあっという間に消え、手の中は空っぽになった。
靴の中にもメダルは残っていない。
完全に無一文――路地裏での生活再スタートは、あまりにも無力感のある状況から始まった。
坂田真時は肩を落とし、路地の石畳を見つめる。
「……くそっ、やっぱり代償とか関係なく、運だけじゃダメだな」
周囲では人々が楽しげに銅貨をやり取りしている。
自分は手元のスキルも使えず、ただ無力に立ち尽くす。
しかし、胸の奥には小さな決意が芽生える。
「……次は絶対、計画的に稼ぐ。運任せはもうやめる」




