ゴブリン.2
――第二波のゴブリンが迫る。
結界に守られた坂田は短剣を構えたまま、歯を食いしばる。
(もう一度を……いや、駄目だ。これ以上使えば、体が保たない)
胸の奥に残る鈍痛が、それをはっきりと告げていた。
仲間は強化され、護衛対象は守られている。
ならば今度は――自分自身が戦う番だ。
「……クソッ!」
坂田は足元に転がるゴブリンの死体へ飛び込み、握られたままの汚れた石斧を引き抜く。
ずっしりと重い感触。血と泥にまみれたそれを見て、わずかに息を呑んだ。
(これを、投げる!)
全身の力を込め、石斧を振りかぶる。
だがその瞬間――
――カチリ。
頭の奥で何かが嚙み合うような音がした。
「……え?」
石斧が淡い光を帯び、形を失っていく。
次の瞬間、坂田の掌には硬貨の冷たい感触が残されていた。
「メダル……?」
光を帯びた銀色のメダルが、指の間で輝いている。
直感で理解する。
これは――新しいスキル。
「《変換》……命なきものを、メダルに変える力……!」
驚愕する坂田をよそに、第二波のゴブリンたちは結界へ迫りつつある。
仲間たちは前線で奮戦しているが、敵の数は明らかに多い。
坂田は震える息を吐き、決断した。
「なら……使い道は一つだ!」




