代償
息を整えながら、真時は屋台の親父に銅貨3枚を差し出す。
「これで、スープ一杯もらえますか?」
だが同時に、身体の奥に鈍い痛みと重さが走る。
額に汗が滲み、心臓が早鐘のように打つ。
神殿で聞いた言葉が脳裏に蘇る。
《代償:生命力・魔力を消費。過度な使用は死に至ります。》
小さな成功でも、スキルを使えば体力と精神力が削られる――
坂田真時はその代償を初めて実感した。
「……くそ、少しずつ使わないとな」
親父は素朴に微笑み、銅貨を数えてスープを手渡した。
残りの銅貨5枚を握りながら、真時はお金の換算を尋ねる。
「すみません、銅貨って、銀貨や金貨と比べてどのくらいの単位なんですか?」
親父は手を拭きながら驚いた顔で答える。
「そんなのもわからないのか、銅貨十枚で銀貨一枚、銀貨十枚で金貨一枚。町での物は、だいたいそれくらいの単位で動く」
真時は頭の中でそっと計算する。
銅貨3枚でスープ、残り5枚で雑貨や材料も買える。
銀玉やリール、メダル――スキルさえあれば、生活費も稼げると理解した。
だが、使いすぎれば体がもたない。
「よし……代償に気をつけながら、少しずつ生き延びる」
坂田真時の異世界生活は、こうして偶然のメダルとスキルの力で、初めての生存手段を手に入れた。
銀玉、リール、メダル――すべてが、彼の異世界での武器であり、冒険の第一歩だった。




