最高の仲間とパーティ名
――大広間の一角。
バルドが酒場さながらに大声を上げる。
「おいおい! どうせならカッコいいのにしようぜ! 《鋼鉄の剣》とかよ!」
「ありきたりすぎる」
レオンが即座に却下する。腕を組み、眉間に皺を寄せた。
「《暁の守護者》はどうだ?」
ユリクは小さく首を振り、少し恥ずかしそうに呟く。
「……《流星のきらめき》、とか……」
「うわ、詩人かよ!」
バルドが腹を抱えて笑う。
「そんな甘ったるい名前でモンスターに挑めるかってんだ!」
受付嬢も思わず口元を押さえ、笑いを堪えていた。
三人のやり取りを聞きながら、坂田はずっと黙っていた。
胸の奥に、あの瞬間が蘇る。
――血を吐き、地に倒れ、それでも奇跡のように勝利を掴んだ夜。
その時、スキルの光とともに現れた、運命のような「目」。
坂田は立ち上がり、仲間たちを見渡した。
「……決めた」
「お、坂田が言うのか!」
「いいじゃねぇか、聞かせろよ!」
深呼吸ひとつ。
そして――
「俺たちのパーティ名は、《中段チェリー》だ」
一瞬の静寂。
だが次の瞬間、バルドが爆笑する。
「はっははは! なんだそりゃ! いやでも……クセになるな!」
レオンも苦笑しつつ頷いた。
「……妙に縁起がいい響きだな。幸運を呼ぶ感じがする」
ユリクも、柔らかく笑みを浮かべる。
「坂田が選んだなら、それが一番いい。私も賛成だ」
受付嬢は目を瞬かせながら、羊皮紙にその名を記す。
「では……パーティ《中段チェリー》、正式に登録完了です!」
冒険者たちの拍手と歓声が広がる中、四人は肩を並べた。
新たな名を背負い、彼らの旅は――今、始まったのだった。




