報酬
――数日後。
坂田の体はほぼ回復し、歩くだけなら問題ないほどになっていた。仲間たちと共に冒険者ギルドを訪れると、大広間はまだ戦いの話題で持ちきりだった。
ギルドマスターが立ち上がり、重々しい声で告げる。
「街を救った四人に、改めて礼を言う。魔獣の脅威を退けられたのは、お前たちの奮戦あってこそだ。特に――」
坂田へと鋭い視線を向ける。
「命を削るような力を振るってまで、仲間を守ったと聞いている。お前の覚悟は、この街の誇りだ」
場が静まり返る中、マスターは背後の兵士に合図をした。大きな箱が運び込まれ、蓋が開かれる。
黄金の輝きが溢れ出した。
「坂田、これは街からの特別報酬だ。金貨――百枚」
大広間にどよめきが走る。冒険者たちが息を呑み、目を見開く。これほどの大金を一度に授与されるなど、滅多にない。
バルドが豪快に笑った。
「ははっ! 百枚か! こいつは腰が抜けるぜ!」
レオンは腕を組み、冷静を装いながらも口元が緩む。
「……まぁ、これくらいは妥当ってことだな。命を張った代償としては」
坂田はみんなを見て、笑顔で言った。
「……そうだな。一人じゃ掴めなかった勝利だ。四人で手にした金だ……四人で分ける」
金貨はきっちりと四等分され、それぞれの手に渡る。
重みはただの金ではない。仲間と共に戦い、生き延び、街を救った証だった。
バルドが袋を肩に担ぎ、にやりと笑う。
「よし! 今日はこの金で酒盛りだ! 死にかけた坂田の退院祝いだな!」
レオンが苦笑する。
「ま、どうせお前が一番飲むんだろうがな」
ユリクは静かに笑みを浮かべ、坂田に向かって言う。
「……これでようやく胸を張れるな。俺たち、街を救ったんだ」
坂田は三人の顔を順に見渡し、胸の奥からじわりと込み上げるものを感じた。
「……ありがとう。これからも……一緒に頼む」
四人の絆は、金貨百枚よりも重く、確かに結ばれていた。




