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異世界ギャブル勇者〜確率を超えて〰️  作者: 海木雷


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20/179

――翌朝。


防壁の外はまだ焦げ臭く、夜の戦いの余韻を残していた。

坂田は避難所の粗末な寝台に横たわり、浅い呼吸を繰り返している。


バルドは腕を組んだまま、ずっと坂田の傍を離れようとしなかった。

「……あんな力、俺は見たことがねぇ。剣でも槍でもねぇ、まるで戦場そのものを塗り替える力だ」

低い声に、レオンが鼻で笑った。

「だが、博打みたいなもんだろうな。使えば勝てる、だが使った本人が死にかける。……そんなもの、長くはもたねぇ」


ユリクは沈黙していた。盾を抱き締めるようにして、じっと坂田の寝顔を見つめる。

彼だけは、坂田の発した「決死の気迫」を忘れられなかった。

血を吐き、崩れ落ちながら、それでも仲間の背に風を送り込むように立ち続けた姿を。


「……あのとき、俺たちは守られたんだ」

ユリクがぽつりと呟く。

「代償が何であろうと、あいつは命を張って戦った。それだけは……揺るがない」


仲間の間に重い沈黙が流れたそのとき――。


坂田のまぶたが、かすかに震えた。

唇が動く。声にならない声が漏れ、やがてひどくかすれた囁きが漏れる。


「……勝った……んだよな……?」


全員が息を呑んだ。


バルドが椅子を蹴倒す勢いで立ち上がる。

「ああ! お前のおかげでな! 魔獣どもは全部ぶっ倒した!」


その声に応えるように、坂田の目が薄く開かれた。

視界はまだ霞んでいたが、確かに仲間たちの姿を捉えている。


レオンは肩を竦めた。

「ったく……死人みたいな顔して、それでも確認しなきゃ気が済まねぇのか」


坂田は息を荒くしながら、かろうじて言葉を紡いだ。

「……そっか……なら……よかった……」


力尽きるように瞼を閉じたが、その口元には確かな安堵の色が浮かんでいた。


仲間たちは顔を見合わせ、しばし言葉を失った。

戦いは終わった。街は守られた。


――そして、坂田もまだ生きている。

その事実が、彼らの胸に何より重く響いていた。

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