激闘.2
仲間たちは必死に坂田を運んでいる。
「急げ! こいつ、もう限界だ!」
「まだ息はある……大丈夫、死んじゃいない!」
坂田の顔は蒼白で、吐血に濡れた唇は震えていた。意識は戻らず、浅い呼吸だけが彼の生を証明している。
やがて彼らは街の防壁近くにある避難所へ辿り着いた。正規兵の治療班が駆け寄り、倒れ込む坂田の身体を引き受ける。
「こいつ……酷いな。まるで身体の内側から焼かれているみたいだ……」
治療師が呻くように言いながら、聖水と治癒術を使うが、坂田の身体は思うように反応しない。
仲間たちは治療を見守りながら、互いに視線を交わした。
「……あの力、見たか?」
「ああ。馬の幻影みたいなものが現れて……魔獣を押し潰した」
「だが代償に、こいつはこのザマだ……」
不安と疑念が渦巻く。それでも誰一人として坂田を見捨てる者はいなかった。
「理由なんざ今はどうでもいい。あいつがいなきゃ、俺たちは魔獣に食われてたんだ」
「……そうだな。死なせちゃならねぇ。こいつは命を張って、街を守ったんだ」
やがて治療師が額の汗を拭いながら告げる。
「命は繋いだ……ただ、目を覚ますまでには時間がかかるだろう」
仲間たちは深く息をつき、安堵と共に重い沈黙に包まれた。
夜が更け、防壁の外にまだ燻る煙を見つめながら、一人が呟く。
「坂田……お前、一体何者なんだよ……」
その声は、気を失ったままの坂田には届かない。
しかし彼の胸の奥で、かすかな鼓動が確かに鳴っていた。
それは、仲間と共に次の戦いを生き抜くための、まだ消えぬ証だった。




