過去を断ち切る
――白が、砕けた。
次の瞬間、爆ぜるような光の中から黒い影が飛び出した。
それは、かつて商隊だった者たち――だがもう人ではない。
肌の代わりに黒水晶のような結晶が覆い、瞳孔の奥では光が逆流していた。
「来るぞ!!」
レオンが前に出る。
分厚い盾を構え、衝撃に備えたその瞬間、二体の影が同時に跳躍した。
――ガンッ!
凄まじい衝突音。
盾と結晶の爪がぶつかり、火花が散る。
レオンの足が滑り、硝子のような地面が軋んだ。
「重ッ……!こいつら、力が人間じゃねぇ!」
「下がるな、押し返せレオン!」
バルドが大剣を振り抜く。
その刃は幅広く、振り下ろすだけで風を裂いた。
一体の結晶兵の胴を叩き割る。が、
砕けた断面の奥で、光が蠢く。
まるで“中にもう一体”が潜んでいるかのように。
「まだ動くのかよッ!?」
バルドが距離を取るより早く、結晶の腕が再生し、
彼の大剣を弾き返すように伸びた。
「レオン!援護を!」
「任せろ!!」
レオンの盾が前に出て、金属の音が響く。
巨大な爪を受け止めた瞬間、盾が震え、腕が痺れる。
「ぐっ……クレアッ!」
「留まりなさい!!」
クレアの詠唱が響き、地面の結晶が光を帯びる。
そこから走った紫電が、敵の脚を貫いた。
「今だ、ユリク!」
「わかってる!」
ユリクが弦を引く。
指先から青白い光が流れ、矢へと注ぎ込まれた。
「とっておきだ!《狩人の星》ッ!」
放たれた矢は一瞬で分裂し、六つの光弾となって飛ぶ。
それぞれが敵の関節を正確に射抜き、動きを封じた。
「真時!」
「行く!!」
真時は一歩踏み出す。
硝子の地面が波打ち、足元がきしむ。
黒い影の間をすり抜けるように走り抜け――
「ハァァッ!!」
斬撃が閃いた。
彼の剣は特別な魔剣ではない。ただの鉄だ。
だがその“振るい”には、迷いがなかった。
刃が結晶を割り、粉塵が舞い上がる。
その中で一体が崩れ落ちる。
しかし――
「まだだ……!」
バルドが背後を指さした。
倒れた結晶体の影から、別の形が“生まれていた”。
「再構成してる!?まるで、記憶が自分を修復してるみたいだ……」
ユリクが息を呑む。
その瞬間、空が震えた。
灰と蒼の天幕が裂け、黒い光柱が降りてくる。
声が響く。
「……過去を断ち切る剣など、存在しない」
光柱の中から現れたのは、
巨大な影――竜のような輪郭を持つ結晶の巨体。
「……でけぇ……!」
レオンが後ずさる。
その竜は、鎧のような結晶の翼を広げた。
一振りで、地を砕く。
風も熱もない。ただ、世界の“法”そのものが削られていく。
「ッ、全員散開!」
真時が叫ぶ。
クレアが詠唱を再開する。
「《光よ、形を成しすべてを防げ》!」
彼女の前に輝く光輪が浮かび、衝撃波を受け止めた。
「今のうちに!」
バルドが竜の左脚へ駆ける。
大剣を構え、渾身の力で振り上げた。
「うおおおおッ!!!」
刃が結晶の脚を斬り裂く――だが、割れた破片が逆に爆ぜ、バルドの頬を裂いた。
「クソッ、反射しやがったか!」
「光よ、癒やせ!!」
クレアが詠唱を重ね、バルドの傷を塞ぐ。
「ありがとよ!」
その間にも竜が咆哮する。
翼の縁が空を切り裂き、そこから無数の黒い光片が降る。
「矢の雨返しか……!」
ユリクが口元を歪める。
「だったら――こっちもだッ!」
彼が放った矢が空で弾け、鏡のように分裂する。
光と闇が交錯し、閃光が嵐のように降り注いだ。
その中を、真時は走る。
息が白い。
手の中の剣が震える。
特別な力なんてない。
だが――仲間の背中を、ここで守ると決めた。
「――うおおおおおおッ!!!」
剣が光を裂き、竜の胴を貫いた。
黒い結晶が砕け、内部の光が溢れる。
だが竜の瞳が、真時を見た。
その声が、頭の中に響く。
「過去を……否定するな」
次の瞬間、爆発のような衝撃。
真時の身体が吹き飛ぶ――
「真時ッ!!」
レオンが盾で衝撃を受け止め、地を滑る。
バルドが背中を支え、ユリクが矢を構える。
「立て、真時!お前の力しかねぇ!!」
「……ああ、わかってる……!」
剣を握る手が血に濡れても、彼は立った。
灰の空に、竜が再び咆哮する。
クレアが最後の詠唱を紡ぐ。
「《黎明よ――彼を導け!》」
光が、真時を包んだ。
真時が呟く。
《生命力・変換》
精霊との契約により痛みや苦しみは少なくなった。
だが、真時は口から血を吐き、身体中から血を吹き出しながら、赤黒いメダルを手にする。
「はぁ、精霊が痛みを持ってくれても、これほどくるか、」
真時は今にも倒れそうな体をこらえる。
そして、
血で濡れた口をあける。
《スキル・スロット》
世界が止まる。
仲間も色を失う。
現れたスロット台はまるで雪の城の様な台だった。
真時は自分の命で作ったメダルを投入する
「くっ...、命を賭けた代償が、はぁ.....小役とかじゃないよな....」
メダルを飲み込み、スロット台が命を得たかの様に回りだす。
真時は血だらけになりながらも、目はギラついていた。




