表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ギャブル勇者〜確率を超えて〰️  作者: 海木雷


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/182

コボルト発見

――北の森・入り口付近


木々が鬱蒼と茂り、昼間にもかかわらず森の中は薄暗かった。

風が枝葉を揺らし、小川のせせらぎが遠くから聞こえてくる。


レオンは盾を構え、低い声で告げた。

「ここから先は注意しろ。足跡や痕跡を探すんだ」


ユリクは地面にしゃがみ、湿った土を指でなぞる。

「……新しい。一日も経ってないな。家畜を引きずった跡もある」


バルドは大剣を軽く肩に担ぎ、周囲を見回した。

「つまり、まだ近くに潜んでるってことか。好都合だ」


クレアは魔力を集中させ、淡い光の玉を手のひらに灯す。

「これで少しは周囲が見やすくなるはずです。…でも、気づかれるかもしれません」


真時は光に照らされた森の奥を見据え、短く頷いた。

「構わない。どうせ奴らとぶつかるんだ。むしろ早く見つけられる方がいい」


そのとき、風に混じって低い唸り声が響いた。

森の奥、茂みの間から黄色い瞳がいくつも光る。


レオンが静かに息を吐く。

「来るぞ。隊形を崩すな」


数匹のコボルトが姿を現した。毛むくじゃらの体、粗末な棍棒や槍を手にし、牙をむき出しにして迫ってくる。

さらに奥の茂みでは、まだ複数の気配が蠢いていた。


バルドが前に出て、大剣を振りかぶる。

「よし、まずは肩慣らしだな!」


ユリクはすでに矢をつがえていた。

「二匹、先に落とす!」


クレアは光を散らし、仲間たちの足元を照らす。

「足元、気をつけて!」


真時は剣を構え、仲間と視線を交わす。

「……行くぞ。《中段チェリー》の力を見せる時だ!」


――コボルト討伐戦の幕が、ついに上がった。


数匹のコボルトが吠え声を上げ、獣じみた足音を響かせながら突進してくる。

湿った土が蹴り上げられ、獰猛な臭気が辺りを包んだ。


レオンが一歩前に出て、盾を地に構える。

「俺が受ける! 後ろは任せた!」


最前線に飛び込んできたコボルトの棍棒が、レオンの盾に叩きつけられる。

金属音が響き、衝撃で土が跳ねる。だが彼は一歩も退かない。


「はッ!」

バルドが横から踏み込み、大剣を振り下ろした。

空気を裂く音とともに一体のコボルトが真っ二つにされ、血飛沫が草むらに散った。


「二射!」

ユリクは弓を放ち、矢は二本同時に飛び出す。

一匹は額を貫かれ、もう一匹は肩を射抜かれて転げた。

「まだ奥にいる、気を抜くな!」


真時は剣を握り直し、駆け出す。

接近してきたコボルトの槍を身をひねってかわし、刃を振るう。

一閃、敵の首を裂き、黒い血が飛び散った。


その横でクレアが両手を掲げ、魔力を集中させる。

「《光槍》!」

光の矢が放たれ、茂みに潜んでいたコボルトを直撃。悲鳴と共に木の根元へ叩きつけられた。


しかし、奥からさらに吠え声が響く。

次の瞬間、五、六匹のコボルトが群れを成して飛び出してきた。

中には、粗末だが鉄片を貼り合わせた鎧を着た個体――亜種のリーダー格らしき影も混じっている。


レオンが鋭く叫ぶ。

「増援だ! ここからが本番だぞ!」


バルドは笑いながら構え直す。

「面白ぇ! まとめて斬ってやる!」


ユリクは矢筒から素早く矢をつかみ、冷静に狙いを定める。

「リーダーを落とせば群れは乱れるはずだ!」


クレアは水魔法の詠唱を始め、真時は仲間たちを見渡しながら、心の奥にスキル発動の衝動を抑え込んでいた。


――戦場の空気がさらに熱を帯びていく。


鎧を着たリーダー格のコボルトが、甲高い咆哮を上げた。

それに呼応するように群れのコボルトが一斉に突進してくる。


「来るぞ!」

レオンが盾を突き出し、最前線に立つ。

棍棒や槍が雨のように打ちつけられるが、彼は受け止め、踏みとどまった。


バルドがその脇から突撃し、気合いを込めた一撃を横薙ぎに振るう。

「どけぇっ!」

三匹のコボルトがまとめて吹き飛び、地面に転がった。


その一方で、後方に控えていたクレアが大きく息を吸い込み、長めの詠唱を始めた。

「水よ、流れを集め、足を奪え――《沼流》!」


次の瞬間、敵の足元に水が湧き出す。

小川から引き寄せられた水がぬかるみとなり、コボルトたちの足を絡め取った。

「ギャッ!?」

「ガルルッ!」

獣じみた鳴き声が次々と上がり、数匹が泥に足を取られて転ぶ。


だがその隙を狙って、別のコボルトが横からクレアに向かって飛びかかった。


「クレア!」

真時が即座に駆け出し、身を挺して割り込む。

刃と牙が迫る瞬間、彼の剣が閃いた。

鋼の音と共に、コボルトの武器が弾かれ、真時は渾身の突きで敵を貫く。


返り血を浴びながら、真時は振り返る。

「後ろは俺が守る!」


クレアは少し驚いた表情を見せたが、すぐに力強く頷いた。

「はい!」


前衛では、レオンがリーダー格を抑え、バルドが援護し、ユリクの矢が次々と飛び交う。

そして後衛では、真時が必死にクレアを守り抜いていた。


――足場を奪われたコボルトたちは次第に混乱し、隊列を保てなくなっていく。


しかしリーダー格のコボルトだけは、重い鎧を泥ごと踏みしめ、力任せに前へ進んでくる。

その姿は他のコボルトとは一線を画す存在感を放っていた。


レオンが盾を構え直し、低く呟く。

「こいつは……一筋縄じゃいかんな」


――リーダー格コボルトとの決戦が始まろうとしていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ