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第43話:ごーっとふぃんがぁああ

 冷や汗を拭いながら、未だ後方で堂々と闇魔法や影魔法を大盤振る舞いしながらモンスターの群れを屠り続けているソフィアを背中で隠すように、無理か。




 とにかく、俺は勤めて平静を装いながら青髪と赤髪の奇抜な二人組と向き合う事にした。




「さて、誤解しないでもらいたいんだけど僕は別に氷室さん達を責め上げたいわけじゃないんだ」




「ワイもそこに関しちゃ同意見や」




 ここで事実を丸々話すにはリスクが高すぎる——何より、ベリアルへの対処を考えれば時間もないが、有耶無耶にして付いて来られでもしたら余計厄介だ。




 考えるんだ。




 この場面をひっくり返して切り抜けられる最適な弁明を!




「僕が知りたいのは、僕らにも同じことが——」


「矮小なる存在が答えを求めなんとする? 妾の深淵を覗き見る覚悟が貴様らにあると?」




 俺と蛇喰、緋獅子の中心に突如現れた声の主。




 瞬間、蛇喰と緋獅子の顔色が明らかに変貌した。




 全身から汗を吹きだし、小刻みに手足は震え、本能の警鐘に従って必死に動こうとしているのだろうが全く動けずにいる。




 これはまずい。




 なんで、いきなり出てきたんだコイツは。




 背丈は小柄なシュナイムよりも更に低い。




 赤と黒の縞模様は髪色とピンと立った頭部の虎耳も同様で、腰から生えた虎の尻尾も同じく赤と黒の縞模様。




 ツインテールがよく似合うその見た目はどこからどう見ても美少女のソレだが、灼熱の様に赤い瞳の片方は黒の眼帯で覆われ、その装いは何故か異様に露出度の高い軍服というアンバランスな出立ち。




「貴様ら矮小なる下界の求めに応じ答えよう。


 妾の名は『炎虎』エハド! 痴れ者どもに再び問う!


 貴様らは深淵を、欲するか! 力が、欲しいか!」




 ゴクリと誰かの喉を鳴らす声が聞こえた。




 その瞬間、見た目ただの美少女を前に動けない自分への苛立ちからか、緋獅子が裂帛の叫びを上げて刀を振り上げ、




「お、おおおお! クソガキャ、一体何者——」


「バカ、やめろっ」




 シュッと空気が裂ける様な音、気がつけば腰から伸びた赤と黒の縞柄の尻尾が鞭のようにしなり緋獅子の腹部を強かに打っていた。




 なんの余韻もなく遥か後方にあるビルへと吹き飛ばされた緋獅子は、背中から強烈にビルの壁面へと減り込み、そのままぐったりと手足を投げ出した。




 生きてるよな?




「妾をガキ呼ばわりとは、無礼千万! 地の果てで悔い落ちるが良い」




 これ以上誰かを巻き込むわけにはいかない。




 俺は契約精霊最後の一柱、『炎虎』エハドを一先ず指輪に戻そうとして。




「ご無礼をお許しください。


 さぞ高明な『神霊様』とお見受けいたします。


 ここは一つ、僕に名を名乗る栄誉を賜らせ——」




 ああ、違う、コイツのキャラはそう言うんじゃなくて。




 折り目正しく片膝を付いてエハドの前に傅く蛇喰。


 忠誠の証とでも言わんばかりにエハドの手に触れようとして、




「蛇の子はすかん。妾の前から()く消えよ」




 触れられそうになった手をスッと引っ込めたエハドが代わりとばかりに軽く手のひらを振るう。




 ふわりと暖かい風が蛇喰の頬を撫でたと同時、強力な熱波と衝撃が蛇喰を襲い、これまた錐揉み状態で遥か後方へと吹き飛ばされた。




 ああ、妹と母の上司がっ!! 頼むから生きててくれよ。




 念の為吹き飛ばされた二人に【治癒魔法】を遠隔発動。


 多分大丈夫、なはず。




「エハド、やりすぎだ」




 何にしてもやりすぎてしまう『炎虎』に軽くチョップ。




 ただ悪気があるわけじゃないからこれ以上は俺も怒りきれない。




「ふぉおっ、主人どのか! 妾はまた何か主人殿を困らせて——、ぬぬっ!


 これは、この混沌とした空気!!


 そしてこの惨状、これは! もしや『ラグナロク』!?」




「ただのスタンピードだが?」




「終焉の日がこんなにも早く訪れようとは!


 浄化! 浄化を急がねばならないぞ主人よ」




「うん、そうだな。でも、お前の攻撃は下手したら一個の都市が本当にラグナロクしちゃうレベルだから、な、今日は大人しく」




「妾の右手が、真っ赤に燃える! 終焉を焼き滅ぼせと轟き叫ぶっ!」




「ねぇ聞いてる? エハド〜、おーい」




 ダメだ、こうなるとこの子はもう話が通じない。




 というかまともに会話できた記憶が一度もないような気もする。




「主人どの!




 妾はこれより悪意の使徒を滅するため、天井より滅殺の豪炎を降り注がせる!!




 いざ! ばぁあああああぁああく熱っ!!」




 言うなり、俺でも追跡不可能な速度で上空へと向かうエハド。




 ああ、これはもう、あいつらに任せて俺は自分のやるべきことをやるしかない、うん、それ以外道はない。




「ソフィア〜、エハドが出たから、急いでダンジョンに潜るぞ〜」




「ゑ!?」




 諦めの境地。からのどこか気の抜けた呼びかけにソフィアが以上なまでのリアクションで反応。




 あのソフィアですら制御不能なのだ、俺にどうにか出来るレベルは超えてしまっている。




 俺は近くにいた〈探索者(シーカー)〉の一人を捕まえて一応説明。




「今からなんか終焉?が降ってくるらしいから、程よいところで退避した方がいいぞ!


 俺の仲間がここら一体結界で覆う前に退避! よろしく! これ、蛇喰くんと緋獅子くんからの命令ね」




「は? 一体なにを、って二強マスター二人からの命令!?」




 一先ずこれで大丈夫だろう。




 この辺り一体は更地になるだろうけど、スタンピード騒ぎは嫌でも終息する。




 一応シャロシュたちにも状況説明はしておくとして、俺とソフィアはダンジョンで真相を確かめに行く。




「俺たちには、やることがある! そうだよな、ソフィア」


「うん。これは他の人に任せられない。シュナイムたちならきっと大丈夫!信じよう」




 どうやって収集して良いか分からなくなった俺は、一先ず頼れる契約精霊達に全部丸投げという手段で託す事にした。




 ソフィアも同意見なのだ、全く問題ない!




 改めて意を結した俺は気持ちを切り替えてソフィアと共に現代で二度目のダンジョンへと足を踏み入れるのだった。

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