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第三十二話 猛突進!

「殺す…」


神木陸は佐々木の異変をすぐに察した。


「佐々木!やめろ!!!」


だがその耳には届かない…スキー板を斜面に垂直にしてブレーキを掛けると見事にピタッと静止した。


「佐々木!ダメだ!止まるな!!止まったらヤツの思うつぼだ!!」


ちょうど斜面の下に佐々木が潜り込む形となり、形勢は逆転…熊は己れの重量に任せて猛突進してきた。

すると田中も速やかにターンして、銃を構える。その距離、50m…幸いに風はない。


静かに照準を覗き、熊の動きをトレースすると、引き金を引いた。


ダン!


…脂肪と筋肉の鎧がもっとも薄いベータのアキレス腱にピンポイントで命中させて、動きを止めた。その巨体はバランスを崩し雪面を転がり再び、佐々木の眼下へ。


すると田中は、続けざまに周囲の熊たちが佐々木に危害を加えないよう銃撃で威嚇していく。


「佐々木!今だ!今のうちに逃げろ…」


だが、彼はもはや冷静さを失っていた。小銃をベータの巨体に乱射する。


「くそ!くそ!くそ!!」


すると弾を受ける度に体はその衝撃で揺れる。それはもう死んでいるように動かない。



月島も司令部から命令を下す。


“佐々木三曹!!撤退よ、これは命令です!!”


だが、彼の耳には届かない。すぐさま次の弾を装填すると、それが切れるまで撃ち続けた。


「佐々木…」


彼は修羅の道への一歩を踏み入れてしまった、もう戻って来れないかも知れない…陸は静かに見つめていたが、その時、ある異変に気づく…


「まずい!罠だ!」


助けに行くにも雪の斜面を50mほど、しかもその途中にはそれを阻む熊の群れが…とっさの間で考えた陸は、すぐに無線で何かを指示した。


一方の佐々木はナイフとサンダーを片手に、スキーで滑走しその勢いでベータの巨体に飛び乗った。


「まだだ!楽には死なせん!!」


そして、その肉塊にナイフを突き刺す!だがその厚い脂肪に阻まれて刃は筋肉にまで届かない。


その瞬間だった…


佐々木の足下の巨体が突然動き出し、激しい咆哮と共に、その凶暴な爪で強烈な一打が繰り出される。


すると佐々木の肉体は全身の骨、筋肉、神経がバキバキと音を立ててしなり、まるで体に付着したゴミのように弧を描き雪面に叩きつけられた。


「佐々木!」


佐々木の身体はピクリとも動かない。



すると、ベータはのそりのそりと近づく。新しいオモチャを見つけたように…


「くそっ!全員、撃てぇ!!」


ベータへ一斉射撃をするが、弾は厚い脂肪に阻まれて致命傷を与えられない。そして、トドメを刺すもう一打へその爪を振りかざした瞬間…


ドドドドン!


雪上車『大雪』がその脇っ腹に突進した。


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