8 デートへの期待
楓の姿が見えなくなって、俺は大きく息を吐いた。
今日の試合の興奮と、明日のデートへの期待で、頭の中がぐちゃぐちゃだ。
明日のデートの準備…って、具体的に何するんだろう?
服とか、ちゃんと決めておかないと。動物園、どんな動物がいるか、調べておいた方がいいかな?
考えることは山ほどあるけど、今はただ、ひたすらに嬉しい。
楓との初めてのデート。絶対に最高の1日にする!
楓を見送って、俺がまだ余韻に浸っていると、背後から聞き慣れた声がした。
「おーい、タケル! 今日の試合、ナイススパイクだったな!」
「んで、誰を見送ってんだよ〜?」
振り返ると、ニヤニヤ顔のしゅんとりょうが立っていた。完全に、俺と楓の会話を聞いてたな、こいつら。
「お前ら、いつからそこにいたんだよ!」
俺は慌ててごまかそうとする。
「いや〜? ちょうどお前のスパイクが決まったあたりからかな? 最後の1点、すごかったぜ! 特に、誰かの声援があった後からは、目の色が変わったもんなぁ?」
しゅんが肘で俺を小突きながら、俺をからかうように言う。りょうもニヤニヤしながら頷いてる。
「うるせーよ! いつも通りだっての!」
俺は顔が熱くなるのを感じながら、精一杯強がった。
「へえ〜? じゃあ、明日の『デートの準備』ってのも、いつものことなのか? なぁ、タケル?」
りょうが、楓が言ったばかりの「デートの準備」という言葉を強調してくる。もう、勘弁してくれ!
「だから、お前らには関係ねーだろ! ほら、早く帰るぞ!」
俺は半ば強引に二人の背中を押して、エントランスを出た。
「まぁ、明日が楽しみなのはわかるけどさ〜。でも、ちゃんと寝て体力回復しとけよ? 動物園でバテたら、林さんに心配されちまうぞー?」
背後から、しゅんの声が聞こえてくる。
「うるせええええ!!!」
俺は叫びながら、二人から少し離れて歩き出した。
全く、あいつらにはバレバレだ。でも楓との初めてのデート、本当に楽しみなんだ。
明日は、絶対最高の1日にしてやる!