7 エントランスにて
仲間と喜びを分かち合った後、俺はギャラリー席へと目を向けた。
楓が、両手を上げて飛び跳ねるように喜んでくれていた。目が合うと、最高の笑顔で親指を立ててくれた。
俺も、満面の笑みで楓に手を振った。
今日の勝利は、楓の声援があったからこそだ。ありがとう、楓。
早く、楓と動物園に行きたいな。最高の週末になりそうだ!
試合が終わり、汗だくのユニフォームを脱いで着替えを済ませた俺は、バタバタとエントランスに向かった。
さっきの楓の笑顔が目に焼き付いてて、早く会いたかったんだ。
エントランスは、もう人もまばらになってた。きょろきょろと周りを見渡すと、いた!
入口近くのベンチに座って、スマホをいじってる楓の姿を見つけた。
「楓!」
思わず駆け寄って声をかけた。楓が顔を上げて、俺に気づくとパッと笑顔になった。
「タケル! 試合、お疲れ様! そしておめでとう! めちゃくちゃカッコよかったよ!」
楓が立ち上がって、キラキラした目で俺を見てる。その言葉に、今日の疲れが全部吹き飛んだ気がした。
「おう! ありがとう、楓! 楓の声援があったから、最後の1点、決められたんだ!」
俺は照れくさくて、頭をポリポリ掻いた。でも、本当に楓の声が力になったんだ。
「もう、タケルったら! でも、本当にすごかったよ! ハラハラしたけど、最後は感動しちゃった!」
そう言って、楓は嬉しそうに笑った。その笑顔を見てたら、さっきの試合の興奮がまたぶり返してきた。
「よかった、見に来てくれて。疲れてるのに、本当にありがとうな。」
「全然! むしろ、見に来れてよかった! 友達の発表会も楽しかったけど、試合も迫力あったし、タケルの活躍見れたし!」
楓の言葉に、俺の心臓は高鳴る。今日、頑張ってよかった。本当に。
「この後、どうする? まだ時間、大丈夫か?」
明日はいよいよ動物園デートだ。今日はもう、楓は疲れてるだろうから、すぐに帰らせてあげたい気持ちもあるけど、もう少しだけ話したい。
「うーん、友達も待ってるから、もう帰るね。明日のデートの準備もあるし!」
楓はニコッと笑ってそう言った。その言葉に、俺の胸は一気に高鳴った。
「あ、そっか! そうだよな! 今日は本当にありがとうな、応援来てくれて。めちゃくちゃ力になった!」
俺は慌ててそう言って、楓の言葉を遮らないようにした。明日のデートの準備、だなんて言われたら、もう期待しかねーじゃん!
「ううん、またね、タケル! 明日、楽しみにしてるから!」
楓は手を振って、軽やかにエントランスを出て行った。俺は、その背中が見えなくなるまで、ずっと見送っていた。