6 公式戦後編
第2セット終了
「くっそー!」
2セット目は、本当にギリギリの戦いだった。お互いに一点を取り合って、何度もデュースになった。
俺も何度か良いスパイクを決めたけど、相手のレシーブが粘り強くて、なかなか決まらない。
結局、最後の最後で相手のサービスエースが決まって、23対25。悔しいけど、相手にセットを取られた。
ベンチに戻ると、みんな肩で息をしてる。汗がユニフォームに染み込んで、重い。
「ドンマイ! 次だ次!」
しゅんの声が、少しだけ沈んだ空気を変えようとする。
タオルで顔の汗を拭いながら、ギャラリー席に目を向けた。楓が心配そうにこっちを見てる。目が合うと、小さく大丈夫って顔で頷いてくれた。その顔を見て、なんだか力が湧いてくる。
「タケル、あんま落ち込むなよ。次、俺たちが絶対取るんだから!」
りょうが俺の背中をポンと叩く。
「分かってるって! 次は絶対、俺たちが取る!」
俺は大きく息を吸い込んだ。体は疲れてるけど、心はまだ折れてない。
いや、むしろメラメラと燃えてきた。楓が見ててくれるんだ。このまま終わるわけにはいかない。
第3セットに向けて
「よし、みんな、もう一度気合入れ直すぞ!」
しゅんが力強く声を上げる。
「相手は強い。でも、俺たちだって練習してきたんだ。この1点に全てをかけるつもりでいけ! 絶対、最後まで諦めるな!」
全員の視線が、しゅんに集中する。俺も、深く頷いた。
そうだ。まだ、終わってない。最後の1点まで、食らいついてやる。楓に、俺たちの勝利を見せるんだ。
第3セット、最終局面
息が詰まるような静寂の中、試合は最終局面を迎えていた。スコアは26対25。俺たちが1点リードしている。
あと1点。あと1点取れば、俺たちの勝ちだ。
相手のサーブがネットを越えてくる。レシーバーが丁寧に拾い、ボールはセッターへと向かう。
「タケル!」
セッターの声と共に、高く、正確なトスが俺に向かって上がった。完璧な軌道。
目の前には、相手ブロッカーが2枚。体は限界を超えて重かったけれど、ここで決めなければ。
その瞬間、ギャラリー席から、一際大きく、はっきりと俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「頑張れ、タケル!!」
楓の声だ。
体中の疲れが一瞬で吹き飛んだ気がした。全身に力が漲る。
俺はブロッカーの隙間を狙い、渾身の力を込めてスパイクを放った。
バアアアアアアアン
ボールは綺麗にコートに強く響き、スパイクは相手コートの、誰もいない場所に突き刺さった。審判の笛が鳴り響く。
試合終了。
27対25。俺たちの勝ちだ!
「よっしゃああああああ!!!」
俺は雄叫びを上げて、地面に膝をついた。チームメイトたちが駆け寄ってきて、みんなで抱き合う。汗と熱気と、勝利の喜びが体中に溢れてくる。